記事詳細

【衝撃事件の核心】緊急走行中のパトカー、スピード違反で摘発された理由

更新
地方・西

 緊急走行中のパトカーが、スピード違反で摘発された。2月、パトカーや捜査車両など「緊急自動車」の最高速度を45キロ上回る時速145キロで兵庫県内の高速道路を走行したとして、京都府警のパトカーに乗っていた警察官が、兵庫県警に道交法違反(速度超過)容疑で書類送検された。

 猛スピードで逃走する犯人を追跡する場合など、緊急走行中の警察車両が最高速度を超えることは認められるケースもある。しかし、今回は、職務中の警察であっても厳格に取り締った格好。緊急時の速度超過は何が認められ、何が認められないのか。そこには刑法の「正当行為」の適用可否があった。

■パトカー、オービスにつかまる

 「当て逃げされた」

 ことの発端は2月2日、京都府警に入った110番だった。この通報は大阪府内から寄せられたもので、大阪府警を通して京都府警に連絡が入った。折り返し京都府警が通報者に連絡したところ、すでに通報者は兵庫県内に移動していたといい、京都府警高速隊のパトカーが京都府内から出動した。

 府警のパトカーは通報者が待機しているという兵庫県西宮市の中国自動車道西宮名塩サービスエリア(SA)へ急行。その際、警察車両などの緊急時最高速度の時速100キロを超える時速145キロで走行した。この速度なら当然、高速道路などに設置されている速度違反自動取り締まり装置「オービス」が作動する。案の定、府警のパトカーはオービスに捕らえられた。

 このため、兵庫県警は3月、このパトカーを運転していた京都府警の20代の巡査長を速度超過の容疑で摘発し書類送検した。その後、神戸区検は不起訴処分(起訴猶予)としたが、京都府警も5月、巡査長を所属長訓戒、同乗の40代の巡査部長を本部長注意にした。

 京都府警は「指導・教養を徹底し、再発防止に努めるしかない」とコメントした。

■兵庫県警「正当性ない」

 管轄が違うとはいえ、同じ警察同士での摘発劇となった今回の件について、京都府警側は「一刻も早く通報者から話を聴く必要があった。その思い自体は警察官として当然の感覚」と釈明した。

 一方、兵庫県警は「緊急性があるなら、他府県警と連携すればよいことで、今回の事案には速度超過の正当性がなかった」と指摘する。

 通報者が待機していたSAから約6キロ離れた地点には、兵庫県警高速隊の基地があった。つまり、通報者の元に早く着くのが速度超過の理由だったとすれば、目的地まで数十キロ離れた京都府警がパトカーを時速145キロで走らせるより、すぐ近くにいる兵庫県警が向かった方が合理的だった-というのが兵庫県警の見解だった。

 府県をまたいで緊急走行する場合、必要であれば他府県警に協力を依頼するが、今回、兵庫県警には要請がなかったという。

 通常、他府県警に協力を要請する事案は、犯人が逃走していたり、事故や事件が府県をまたいで発生したりしているなど、最終的な解決に連携が必要不可欠だと判断される場合が多い。

 京都府警は「通報を受けた当初、事故自体はあくまで京都府内での案件だと思った。後々の処理も一貫して京都府警で行うと考えて、要請しなかった」と説明する。そして「今となって考えれば、兵庫県警へ要請しても良かったかもしれない」としている。

■「正当行為」の判断

 ただ、高速道路の特性上、今回の事案のように通報者や現場から逃げた容疑者を、事件事故発生地の府県警が、他府県警に連絡を入れずにそのまま追いかけることは珍しくないという。

 道交法では、パトカーや警察車両など「緊急自動車」には、一般車両と異なり、通常の制限速度より速い緊急時最高速度が定められている。一般道では80キロ、高速道は100キロだ。

 交通違反車両の取り締まりや凶悪犯の追跡をする場合もあるため、例外で緊急時最高速度の超過を認められることもある。その根拠となるのが、違法性を免除する刑法の「正当行為」の適用だ。速度超過の必要性が説明できれば、速度違反に問われることはないという。

 今回の京都と兵庫の両府県をまたがるケースとは異なり、岡山県警のパトカーが6月、岡山県内の山陽自動車道を時速約140キロで緊急走行し速度超過したとして、道交法違反容疑で男性巡査長が書類送検されている。このケースも、正当行為とは認められなかったとみられる。

 ある警察幹部は「猛スピードで逃走する犯人を追跡しなければならない場合もあるが、何でもかんでもサイレンを鳴らして緊急走行していいものではない。一般車両と違い速度に特例が設けられているからこそ、厳格に正当行為がどうかを判断しなければならない」と話した。

注目まとめ

    アクセスランキング

    iza! ソーシャルメディア公式アカウント

    • twitter
    • facebook
    • google+
    • iza!を読む