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【衝撃事件の核心】5匹の猫はどこへ消えた…怪しすぎる里親、“猫詐欺”の狙いは「虐待」か

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【衝撃事件の核心】5匹の猫はどこへ消えた…怪しすぎる里親、“猫詐欺”の狙いは「虐待」か

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この猫たちはどこに…。写真は、捨て猫の里親になると申し出た男性に対し、里親を探すボランティアが託した猫5匹のうちの2匹だ。ボランティア側は男性が猫を騙し取ったとして返還などを訴えた。男性は法廷に一度も姿を見せず、ボランティアの人たちは猫の身の上を心配している  「慰謝料なんていらない。ただ、猫を返してほしかった」。捨て猫の新しい飼い主を探すボランティア活動をしている兵庫県や大阪府の女性5人が、飼う意思がないのに里親になると申し出て猫をだまし取ったとして、大阪府枚方市の30代男性に猫5匹の返還と約550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は男性に計約63万円の支払いを命じた。ただ、猫の返還請求は却下。男性は法廷に一切姿を見せず、猫がどこへ姿を消したのか、生死自体も分からずじまいだ。「男性は何を隠しているのか」。怒りが収まらない原告側は、高裁で引き続き真相を追及する方針だ。

 ■すぐ「脱走」「死んだ」

 判決などによると、5人は捨て猫を保護し、里親を捜すボランティア活動に従事。インターネット上の猫の里親募集サイトや地域情報紙を通じ、それぞれ捨て猫の里親を募っていた。いずれも男性が電話やメールで連絡を寄こし、里親候補に名乗りを上げたという。

 原告の1人が最初、男性に猫を譲り渡したのは平成22年11月。猫を適切に飼育できるか確かめるため、男性の自宅を直接訪れた。当時、自宅に他の猫は見当たらなかった。そこで、責任を持って終生飼育する▽無断で第三者に譲渡しない▽飼育できなければ原告に連絡する-などの条件で譲渡契約書まで交わした上で引き渡した。

 続いて2人目の原告が猫を託したのが翌23年1月。1人目と同様、男性が適切に飼育できるか自宅を訪れて確かめ、譲り渡すことにした。他に猫の姿はなく、男性は「以前、友人の猫を預かっていたが、自分の猫として飼うのは初めて」と話したという。そして翌2月、「(猫が)死んだ」とのメールが届いた。

 3~5人目も同年の2月から10月にかけ、「一人暮らしで猫はいない」「自分の猫として飼うのは初めて」と話す男性にそれぞれ猫を託した。そのうち2匹は「脱走した」「逃亡した」とのメールが返ってきた。男性は原告が託した5匹以外に、少なくとも5匹を引き取っていたという。

 ■“欠席裁判”のまま

 「枚方に猫をだまし取っている人がいる」

 24年1月、原告の1人があるブログでこんな記述を見つけた。男性から「脱走した」とのメールを受け、それを信じていたこの原告は「もしかして男性のことか…」と疑い、里親募集サイトなどを通じて情報提供を求めた。

 その結果、「どうも(男性が)怪しい」として集まったのが5人だった。男性に猫の返還を求めたが、男性は「不注意で逃げた」「死んだ」などと応じなかった。5人は昨年4月、「男性に猫をだまし取られた」として、猫の返還と計約550万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。

 ところが、男性は地裁に「だまし取ってない」と争う意向を書面で伝えただけで、法廷に姿を見せることは一度もなかった。代理人をつけることもなく、男性側の“欠席裁判”のまま今年1月、男性に約63万円の賠償を命じる判決が出た。

 判決では「男性は猫を終生飼育する意思があるとうそを告げ、5人をだまして猫を贈与させた。猫を幸せにしてやりたいという思いを踏みにじった」と指摘。一方で、「性別や毛色、写真で猫を特定するのは困難」として、猫の返還請求は不適法と判断した。

 ■「何か隠している」

 判決後、原告側は記者会見した。勝訴したはずの原告女性らからは、落胆の声や判決への批判が相次いだ。

 「命を諦めろという結論。これだけの数を『逃してしまった』というのは不自然だ。裁判所にもっと追及してほしかった」「慰謝料より何より猫を返してほしかった。(裁判所に)猫の命をもう少し認めてもらえるよう、引き続き取り組んでいく」

 原告代理人で「THEペット法塾」代表の植田勝博弁護士も「これだけ短期間に次々と猫が消えたのに、どこに行ったのか分からないままの判決。これでは納得できない」と語気を強め、その場で控訴する方針を明らかにした。

 会見の終盤、原告らは一向に姿を見せない男性に矛先を向けた。「(男性が)法廷に出てこないのが腹立たしい。出てこないのは裏に隠していることがあるからだ」と、怒りを抑えきれない様子だった。

 ■厳しいペナルティーを

 猫は一体、どこへ消えたのか。過去にも今回と同様の訴訟があったほか、里親として譲り受けた猫をストレス発散のために虐待する事件も起きている。

 平成16年、大阪市内の女性が猫の里親募集サイトを通じ、数十匹の猫を譲り受けたが、次々に失踪。猫の返還を求めて愛猫家らが翌17年、女性を相手取り提訴した。大阪高裁は賠償とともに猫の返還も命じたが、結局、猫の行方は分からず返還もかなわなかった。

 また、神奈川県警が23年11月に動物愛護法違反容疑で逮捕した40代の男は、猫の里親募集サイトを通じて譲り受けた猫を次々に虐待、殺傷していた。男は「ストレス発散のため、虐待できる猫がほしかった」と供述していたという。

 判決によると、男はサイトを通じて知り合った愛猫家3人から「愛情を持って育てていきます」と記された誓約書に署名し、虐待目的を隠して猫5匹を詐取。直後に猫を壁にたたきつけたり、川に投げ捨てたりするなどして殺傷していた。

 実は原告らも24年7月、大阪府警に詐欺と動物愛護法違反の罪で男性を告訴。昨年3月に不起訴となったが、それでも納得できず、昨年12月に検察審査会に審査を申し立てた。捜査の手を借り、何とか猫の行方の手がかりをつかみたいという執念を見せる。

 動物愛護法のペット殺傷の罰則はこれまで懲役1年以下または罰金100万円以下だったが、昨年9月の改正で懲役2年以下または罰金200万円以下になった。給餌(きゅうじ)しないなどの虐待行為も罰金50万円以下から罰金100万円以下に強化された。それでも、猫の里親を装った“猫詐欺”は全国で後を絶たないという。

 植田弁護士は訴える。

 「今回の猫も何らかの形で処分されてしまったのかもしれない。殺傷や虐待だけでなく、だまし取る行為にも厳しいペナルティーを与えるような社会にならないと、同種の犯罪は決してなくならない」

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