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映画『永遠の0』決して架空の物語ではない…攻撃機の元搭乗員が語る

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映画『永遠の0』決して架空の物語ではない…攻撃機の元搭乗員が語る

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映画「永遠の0」のワンシーン。空戦の迫力は圧巻だ=(C)2013「永遠の0」製作委員会  【戸津井康之の銀幕裏の声】映画『永遠の0』の特攻パイロットは実在した(下)

 全国ロードショー公開中の映画『永遠の0(ゼロ)』(山崎貴監督)では、主人公のゼロ戦パイロット、宮部久蔵(岡田准一)の人生とともに、第二次世界大戦の戦史の忠実に沿いながら物語は綴られていく。

 ■搭乗員にも極秘裏に進められた日米開戦

 昭和16年12月8日未明、日本は米国に宣戦布告。米ハワイ・オアフ島の真珠湾の米海軍基地に先制攻撃を仕掛ける…。

 映画ではこの真珠湾攻撃の場面がCGなどを駆使し、臨場感あふれる迫力あるシーンとして描かれる。岡田準一さん演じる宮部久蔵は空母「赤城」に乗って参戦。奇襲に成功し、歓喜の声をあげる搭乗員たちを前に、常に冷静な宮部が「日本海軍にも被害が出ている。圧倒的な勝利とは言えない」と分析する場面は印象的だ。

 現在94歳の城武夫さん=香川県在住=は、97式艦上攻撃機の元搭乗員。空母「飛龍」に乗って真珠湾攻撃に参加した一人だ。

 昭和16年8月、極秘裏に鹿児島に召集された城さんたち搭乗員は日々、厳しい魚雷の攻撃訓練を続けていた。海面スレスレの超低空から魚雷を投下する訓練だった。「なぜこんな低空から魚雷攻撃をするのか? 理由は知らされなかったが、大変重要な作戦が行われるのだと感じました」

 11月に入り、北海道・択捉島単冠(ヒトカップ)湾へ移動。「そこには空母が集結しており、いよいよ開戦か」と城さんは思った。そしてハワイへの出航直前、搭乗員が集められた。「日米の和平交渉が成立すれば攻撃は中止、決裂すれば作戦を敢行する、と告げられました」

 ■死を覚悟した真珠湾攻撃

 12月7日、日米交渉は決裂。「明日、攻撃する」と告げられ、上官から「遺書を書き、髪の毛と爪を残しておくように。戦死したら家族の元へ届けてやる」と言われた城さんは「私には妻も子供もなく心残りはないので、遺書は必要ありません」と答えたという。

 8日未明、城さんは97式艦上攻撃機に乗り、第一次攻撃隊として飛龍から飛び立った。オアフ島へ向かう洋上で見た日の出に、「こんな美しい太陽を見るのは初めてだと思いました。もう生きて帰れないかもしれないという極限の状況で感傷的になっていたのですかね」と城さんは苦笑した。

 真珠湾に着いた城さんの攻撃機は米戦艦ウエストバージニアを目標に近づいていった。低空で接近し慎重に魚雷を投下。戦艦に一直線で向かう魚雷の跡を目で追う城さん。魚雷は船腹に命中し、爆発した。「これまでの苦しかった訓練の成果が実った瞬間でした」

 空母に帰還した搭乗員を艦長が出迎え、褒めてくれたが、城さんは「まだ湾内には軍事施設が残ったままだ。もう1回出撃できる」と準備していたという。だが、第二次攻撃隊が帰還後、第三次攻撃は行われなかった。

 「歴史にもし…」は許されないが、城さんが「もう1回行ける」と確信した第三次攻撃が行われていたら、その後の戦史の流れは変わっていたかもしれないといわれている。

 宮部が「手放しでは喜べない…」と語った理由もここにある。

 ■友との死別

 翌17年、城さんはインド洋に転戦。3人乗りの97式艦上攻撃機に搭乗、セイロン島の英軍基地攻撃を終え、帰還しようとしたとき、英国の戦闘機ホーカーハリケーンが追ってきた。護衛の戦闘機はすでに地上攻撃に向かった後で、無防備になった城さんたちの乗る機体は敵機の激しい銃撃にさらされ被弾した。「後部席にいた同郷の稲毛君が腹部を撃たれ、私も風防の破片で右目を負傷、そっと触ると無くなっていました…」

 同じく燃料タンクに被弾、火に包まれながら飛んでいる僚機が割れた風防越しに見えた。

 「僚機は我々の機体の真横へ近づいてきました。そして搭乗員がこちらへ手を振り、最期の別れの合図の後、炎を吹きあげて墜落していったのです。涙がこみあげてきました」

 城さんも「燃料タンクに火が付いたら終わりだ」と思った。「ここで私は23歳で死んでしまうのだと覚悟した。が、機体は燃えず、空母が見えてきたんです。そして何とか海面に不時着しました」

 城さんは機体が沈む前に負傷した同僚を助けだそうとした。「稲毛君は『もうだめです。置いていって下さい』と言ったが、2人で抱え出し、沈む機体から離れ、海面に浮いていたところ駆逐艦に救助されました」

 駆逐艦の道場の畳の上で3人で並んでしばらく眠った。「目を覚まし、隣を見ると、稲毛君はすでに息をしていませんでした」

 ■そのうち皆行く、私たちも…

 亡くなった稲毛さんは平井城一・元香川県知事の旧制高松中学時代の同級生だった。稲毛さんの死を伝える城さんに、平井知事は「彼は僕よりも優秀な学生でした。惜しい人を亡くしました…」と語り、絶句したという。

 右目を失明した城さんは帰国後、飛行教官に就いた。教え子の中には、人気ドラマ「水戸黄門」で光圀役を演じた名優、西村晃氏らがいた。

 「早く特攻に出して下さい」という教え子たちを城さんはこうなだめたという。「そのうちみんな行くのだから。私たちも行く。だから慌てるな」と。そして終戦を迎えた。

 わずか70数年前。日本の未来を信じ、命懸けで戦った彼らの礎のもとに今の日本の平和は築かれている。宮部のようなパイロットたちは確かに実在したのだ。『永遠の0』は決して架空の物語ではない。城さんや笠井さんたちの証言から、そう確信させられる。

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