「労働新聞はタバコの巻紙」北朝鮮の実態
2011/10/15 12:20更新
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記事本文
【脱北者が語る北朝鮮の実態】
「金正恩? 『大将』と呼ばないと大変なことになる。政権は世襲されるだろうが、だれもいい国になるなんて期待していない」…。石川県・能登半島沖で保護され韓国に移送された9人の脱北者。韓国治安機関の関係施設で情報機関と軍、警察によって進められている合同調査に対し、彼らは北朝鮮の“いま”を詳細に語り始めた。当局への取材で入手した証言を元に、北朝鮮の最新実態を2回にわたって報告する。(ソウル 加藤達也)
■6月、清津の市場でストライキ
脱北者9人は北朝鮮東岸の清津とその近郊に住んでいた。表向き自由市場が禁じられている北朝鮮だが、地方都市では大規模な市場が開かれ、住民生活に欠かせないものとなっている。
清津の市場の1つで今年6月、大規模なストライキが発生した。
市場では店舗を構える場所によって売り上げに大きな差が出る。そのため管理当局が時折、場所替えを実施。全体に不満が出ないようにバランスを取っていた。
当局による場所替えの頻度が高まり、店舗側が「固定客をつかめないじゃないか」と抗議。しかし当局はこれに耳を傾けず、同じことを繰り返した。怒った出店者らが売り場に出ても座らないという形でストライキに出た。
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記事本文の続き この抗議行動は、暴力的な取り締まりで知られる秘密警察の国家安全保衛部が投入された3日目に収まった。出店者たちが弾圧を恐れたためだという。
脱北者は「わたしたちは結局、保衛部の力に屈したということだ」とする一方、「市場が開設されておよそ10年になるが、示威(デモ)と呼べるようなこんな事態は初めてで、非常に驚いた」と話す。北朝鮮住民の意識に変化の兆しが見えるともとれる証言だ。こうしたデモやストライキが広範囲で過激な抗議活動に発展することはないのだろうか。
脱北者は当局の質問に「なによりも北朝鮮住民は当局の弾圧を恐れている」と回答。北朝鮮では依然として暴力支配による抑圧が維持できていることを示唆した。
■政権批判に取り締まり厳格化
政権の三代世襲を進める金正日総書記と三男、正恩氏。その支持度や安定度はどの程度なのだろうか。
「(金父子に対する忠誠心は)軍人の間では強いと思う」
脱北者のひとりはこう証言している。
だが、金正日総書記を非難するビラや落書きが後を絶たないのも事実で、最近では街中でも見かけることがあるとも証言。摘発が過度に強化されているもようだ。
秘密警察の取り締まりや弾圧、密告で維持される北朝鮮の統制。その体制を宣伝面で支える労働新聞の権威は失墜している。
脱北者のひとりの証言だ。
「労働新聞は読むこともあるが、路上でたばこの巻紙用に売っている。労働者にとってはたばこの巻紙だ」
この“労働新聞たばこ”は徹底的に取り締まり対象になっているが、取締機関がくると逃げ、彼らが立ち去ると、たばこ売りはまた戻って商売を再開するというイタチごっこが続いている。
ただ、金正日総書記の写真が掲載された紙面は販売されていないという。
■“北朝鮮の春”可能性は「難しい」
「表面的には従っているが不満は抱えている。そして政府を信じる者もいない」
脱北者のひとりは、北朝鮮体制に対する住民の気持ちについてこう明かしている。
中東で相次いでいる民主化勢力による独裁体制の転覆。こうした動きを北朝鮮住民はどう受け止めているのか。
ある脱北者は「聞いたことはあるがどの国で何が起きたのか、詳細には知らない」と話している。
また、別の脱北者は「立ち上がる者がいないため、(北朝鮮での政権転覆は)難しいだろう」と話した。
北朝鮮の反体制活動への弾圧は公開処刑など苛酷だ。
脱北者のひとりは、95年ごろ、「キム・ソンド」という人物が公然と国家批判を行ったとして銃殺されたという話を聞いたことがあるという。
公開処刑については「清津では、スソン川の土手で数百人の眼前で銃殺があった」と証言。しかし最近では住民の批判が高まり、公開はせず、ひそかに処理しているようだ、とも指摘した。
■殺人、強盗、窃盗…清津は最悪の治安
治安機関が強大な権限を持つ北朝鮮。その治安状況はどうか。
脱北者のひとりは「清津では、強盗や殺人、窃盗、恐喝といったありとあらゆる犯罪が増加。治安の低下は著しい」と語っている。
そしてさらに深刻なのが、薬物の蔓延(まんえん)だ。
北朝鮮では「ピンドゥ」と呼ばれる覚醒剤が主流。覚醒剤は市場で流通しているわけではないが、個々では特定のルートをたどって密売されている。
脱北者のひとりは「自分自身で使用したことはないが」と断った上でこう打ち明けている。
「現在、1グラムあたり130中国元(約1570円)。以前はグラムあたり70元ほどだったが、最近になって取り締まりが厳しくなり、流通が難しくなって価格が急上昇した」
先月まで連載してきた「韓流ロケ地を行く」に変えて、今回から脱北者事情やさまざまな事件など韓国社会を取りまく問題を伝える「追跡~ソウル発」を掲載します。
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