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【世界人間模様】@China IT企業辞め山岳写真家に 「天と地の境目」 聖山を撮る

2012/01/11 11:48更新

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【世界人間模様】中国四川省のカンゼ・チベット族自治州丹巴県で、ビデオカメラに祭りの映像を収める大川健三。撮影の魅力を感じるのは「とにかく歩き回って、誰も撮っていない風景に出会ったとき」だという(矢辺拓郎さん撮影、共同) 

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中国
中国・四川省アバ・チベット族チャン族自治州の四姑娘山、四川省成都(省都)

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 「天と地の境目」を見たと思った。氷河が溶け出た水の音、岩場を歩くヤクの足音。標高約4600メートル、氷点下5度の中で野営をしながら数日間待ち続けた晴天が訪れ、空と湖の青がひとつになった瞬間、大川健三(61)は夢中でシャッターを切った。

 中国四川省アバチベット族チャン族自治州のチベット族の聖山「四姑娘山」。美しい4姉妹が化身したと伝えられる4つの峰が連なり、主峰の四姑娘山(6250メートル)が山頂に雪を頂いてそびえる。

 大川は四姑娘山を中心とした自然保護区を拠点に写真家として活動する傍ら、保護区管理局の特別顧問として無給で自然保護の啓発活動に携わる。取り組みが評価され、2007年に四川省の少数民族居住地域で初めて外国人永住居留証を取得した。チベット問題に神経をとがらせる中国当局としては異例の措置だった。

 ■やりがいを求め移住へ

 四姑娘山との出会いは1991年8月。NECでコンピューター開発を担当していた大川は、休暇を利用して幻の花といわれた高山植物「青いケシ」を探しに訪れた。

 香川県の寺の5人兄弟の末っ子として生まれ、上京して就職した。朝から晩までソフト開発に没頭する日々で「ものをつくる喜びがあり、仕事は大好きだった」。コンピューター自動診断の分野で国内外の特許10件を取った。

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記事本文の続き アラスカ、ネパール、パキスタン、北極。30歳ごろから“頭の洗濯”のために、愛機のペンタックス67と世界約20カ国の山や辺境を旅した。

 「ものづくりも写真も人がしないことをすることにやりがいがある」。第二の人生は海外でと考えていた大川は、21世紀になるのを機に50歳で早期退職。「一生暮らせる預金」を懐に、海外の写真家が分け入ったことがなかった四姑娘山の麓の村に移り住んだ。

 5000メートル級の山に数週間こもり、地図にはない撮影スポットを求めて歩き回った。チベット族ポーターは「日の出に合わせて出発は午前4時。大川さんとの仕事はとてもきつい」と苦笑する。

 「親が勧める見合いをのらりくらりかわしてきた」が、写真のモデルを依頼したのがきっかけでチベット族のヨンシーラムーと2001年に結婚。中国語が話せなかった大川は「生涯ここで暮らす」と、パソコンの翻訳ソフトで思いを伝えた。

 「穏やかなところが好き。でも仕事が忙しくて、1年に数カ月しか一緒にいられない」。四姑娘山から車で3時間のカンゼ・チベット族自治州丹巴県で、小学生の一人息子と暮らす妻は大きな目から涙を流す。大川が困ったような笑顔を見せると、居合わせた仲間から冷やかしの声が飛んだ。

 ■人生の旅、終着点は…

 友人から「ジャガツェーラン」というチベット名も贈られた。村で「大川先生」を知らない人はいない。

 08年の四川大地震による道路寸断などで登山客は一時激減したが、ここ10年の観光地化に伴い、ごみのポイ捨て、漢方原料や観賞を目的とした高山植物の違法採取が問題となっている。

 「美しい自然は金の卵。壊れたら観光客は来ない」と住民に繰り返し説き、自然保護区管理局にはトイレやごみ箱の設置、宿泊施設の整備などを提言した。山歩きの途中でごみの山や悪質な違法採取を見つけたら、管理局に通報する。

 初夏に咲き乱れる草花や紅葉したカラマツの林、荘厳な雪山を撮った写真集を自費出版し、美しい自然の保全を訴えた。私財100万元(約1200万円)を投じ村に写真館を建設している。丹巴県一帯に暮らすチベット族の歴史調査もライフワークの一つだ。昨年から、ビデオで村の祭りや風習を映像に残し始めた。「やるべき仕事が多すぎて、あと10年は終わらない」

 小学生のころ、チベット自治区ラサの歴代ダライ・ラマの宮殿、ポタラ宮の写真を見てなぜか心を引かれた。今思えばそれが「原点」だったのかもしれない。「人生は感動の旅」が信条。終着点は妻子が暮らすチベット族の地と決めている。

      □□□

 ≪プロの仕事に誇り チベット族ガイドが活躍≫

 四姑娘山は近年、「東洋のアルプス」として世界的に知られるようになり、1990年代に数千人だった観光客も2006年には約25万人に急増、うち2万6000人が日本人だった。これに伴って、プロのガイドやポーターとして活躍するチベット族も増えている。

 麓の村で登山学校の校長を務める何志丹(30)もその一人だ。12歳の時、大川と4500メートル級の高地を訪れたのが“デビュー”。16歳で学校をやめ、ポーターとして海外の登山家に同行し技術を学んだ。

 村長ら地元有志が設立した登山学校の校長に06年に就任した。年20回は危険度の高いコースを登る登山客に付き添う一方、国内外からの観光客に登山の基礎知識を教える短期講習も行う。

 「チベット族なら誰でも山に登れる。でも、客の体調や天気、リスクを考えるのはプロにしかできない」と胸を張る。1990年代までチベット族のガイドやポーターは四川省成都の旅行社の「下請け」だったが、村長らが中心となって村に直接観光収入が入るシステムを確立。約10年前に1世帯当たり約5000元(約6万円)だった年収は10倍以上に増えた。

 課題は四川大地震で落ち込んだ観光客の回復だ。徐々に客足は戻りつつあるが、震災前の水準には遠く及ばない。何は「ごみを散らかさない日本人は最高。ぜひ来てほしいな」と笑顔を見せた。

 (敬称略、共同/SANKEI EXPRESS

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