【週末に想う】首相は質問に応じ、自らの言葉で語れ 小林静雄
2011/10/10 08:54更新
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いまの首相公邸は2002(平成14)年4月まで首相官邸だった。その時代、首相が執務室を出たとたん、待ち構えた首相番記者が質問を発した。首相が国会に移動すれば、国会の廊下でも記者と首相の質疑応答は続いた。
首相が記者の質問に応じるのは、双方とも当然という感覚だった。首相番の政治記者1年生も質問を競い合った。政治倫理問題が焦点になっているとき、あまりの質問攻勢に「朝から晩までリンリ、リンリと鈴虫のようだ」と、業を煮やした首相もいたが、首相番の質問を拒否することはなかった。
この形の取材をした経験からいえば、一国のトップリーダーに記者が何でも質問できるのは、「開かれた民主主義」そのものだと、いまでも思う。当時、首相官邸を訪れた外国要人が、首相と記者の間の距離が近いことに驚きをもって称賛していたこともある。
ところが、首相官邸が新しくなったとき、首相番がついて歩くことが規制され、その代わりに毎日、官邸で立ち止まって質問を受ける通称「ぶら下がり」取材になった。首相に差し出したマイクに記者がぶら下がっているように見えるので、そう呼ばれる。「ぶら下がり」という言葉に卑屈な響きがあり、あまり使いたくないのだが、テレビ局の業界語が、いつの間にか政治取材の用語になった。
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記事本文の続き この取材を野田首相は就任以来、拒否している。唐突な発言で批判されることが多かった菅直人前首相が東日本大震災以来、多忙を口実に退任まで「ぶら下がり」を拒否していたことを見倣(みなら)っているらしい。野田首相が誕生したとき、誠実な人柄との印象を抱いたが、安全運転に徹するあまりの「逃げの姿勢」に、誠実な人柄はメッキだったのかと疑いはじめている。
言葉は政治家の武器である。首相が、若い時から毎朝、JR船橋駅頭に立ったのは、自らの言葉で国民に訴えたいということではなかったのか。「正心誠意」はどこに行ったのか。大震災の復興財源として増税がどうしても必要というなら、積極的に記者団の質問を受け、自ら理路整然と訴えて国民に理解を求めるべきである。
(エフシージー総研 小林静雄/SANKEI EXPRESS)
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