【逍遥の児】小田原・清閑亭にて論語を学ぶ
2012/01/10 12:37更新
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記事本文
白亜の小田原城。坂道を登る。あった。清閑亭。黒田長成(ながしげ)侯爵の旧別邸である。海が見える。相模灘だ。冬の陽光。きらきらと輝いている。
知人の岩越豊雄さん(67)=元校長=から丁重な案内状が届いた。和紙に墨。子供たちが清閑亭を掃除して、その後、論語を学ぶという。わたしは東京駅から電車に乗って駆けつけた。
貴重な文化財だ。子供たちはぬか袋を持ち、世話役の鈴木敦子さんらといっしょに柱や床をていねいに磨いていく。庭にはたくさんの落ち葉。大塚周和(しゅうわ)君(13)が竹箒(たけぼうき)ではいていた。
「塾の先生に勧められて参加しました。論語は知っています。正座して素読(そどく)すると、心が引き締まります」
さっぱりした。さあ、論語の学習が始まる。広間に集合。大きな、りっぱな座卓を囲む。ケヤキの一枚板。明治の元勲、山縣有朋(やまがた・ありとも)が小田原別邸で使っていたものという。
子供たちは正座した。岩越さんが笑顔で語り始める。
「掃除をすると、自分の心もきれいになりますね」
この日、学ぶ論語の資料を配る。子供たちが手にとった。素読。
「はい、お腹の底から大きな声で」-子貢(しこう)問うて曰(いわ)く。一言にして以て終身これを行うべきものありや。
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記事本文の続き 子曰く。それ恕(じょ)か。己の欲せざる所、人に施すことなかれ。
岩越さんが解説する。孔子の弟子、子貢が質問した。ひと言で、生涯実践すべきことを表すものはあるでしょうか。孔子は答えた。それは恕、つまり思いやりだろう。自分がして欲しくないこと(されていやなこと)は、人にしないことだ。
岩越さんが興味深い実話を披露した。ある幼稚園。男の子が園児をいじめていた。女の子がいった。「己の欲せざる所、人に施すことなかれ」。男の子は嫌がらせをやめた。園長が驚き、事情を聞いた。女の子は日頃から論語を素読しているというではないか。
「女の子は、論語の意味が直感的にわかって、いじめをとめたんだね」さあ。もう一度、大きな声で。わたしも腹から声を出し、唱和した。心。すがすがしく、晴れていく。
(塩塚保/SANKEI EXPRESS)
◇
■逍遥 気ままにあちこち歩き回ること。
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