始まりは夜のスナックだった 鳥取・連続不審死
2009/11/14 15:13更新
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【衝撃事件の核心】
すべての始まりは夜のスナックからだった。鳥取の連続不審死で、詐欺容疑で逮捕された元スナック従業員の女(35)の周辺で死亡した6人の男性は、いずれも女の勤務先のスナックに出入りしていた。好意を寄せた男性に甘えて気を引き、うそで固めた身の上話で情につけ込む-。女の魅力の虜(とりこ)になり、謎の死を遂げた男性たち。新聞記者や刑事までをも巻き込んだ複雑な交際関係の果てに何があったのか。
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記事本文の続き ■「愛嬌あって、ほれっぽい」
JR鳥取駅からほど近い鳥取市弥生町。県庁所在地ながら人口20万人にも満たない小さな地方都市の繁華街の雑居ビルに、女が2年前までホステスとして勤めていたカラオケスナックがある。
「よくしゃべる愛嬌のある子だったけど、ほれっぽいところがあって、いろんな男性が女目当てに出入りしていた。ただ何かと理由をつけて、仕事を休んでいたので、もっと入ってくれたら売り上げも伸びるのにと思ったことがある」。このスナックの女性経営者(67)は、当時の女の様子についてこう語る。
経営者によると、女は平成17年11月からこの店で働き始めた。きっかけは、19年8月に鳥取県北栄町沖の日本海で水死した警備員、古田新一さん=当時(27)=の親族の紹介だったという。
「彼は女が以前経営していた別のスナックからの常連客で、うちにもよく顔を出してくれた。女の自宅で同居していたこともあり、2人が親しい間柄なのは知っていた」
このスナックには、今年4月に死亡したトラック運転手、矢部和実さん=当時(47)=や女と同じアパートの別棟の住人で、10月27日に変死した無職、田口和美さん(58)も出入り。10月7日に鳥取市内の川で遺体で見つかった自営業、円山秀樹さん(57)も仕事仲間に紹介され、数年前から通っていたという。
女の知人らによると、女は約10年前に親族から引き継ぎ、別の場所でスナックを経営。古田さんとは約8年前にここで知り合った。16年5月に特急列車にひかれ死亡した読売新聞鳥取支局の男性記者=当時(42)=も常連客だった。
女が古田さんの自宅近くに引っ越した16年ごろ、経営が苦しくなり閉店。知人の1人は閉店の理由を「とにかく金遣いが荒かったから」と振り返る。
この知人によると、昨年2月に鳥取市郊外の山中で自殺した鳥取県警の40代の男性警察官も当時からなじみの客で、閉店した後も女の勤務先のスナックによく出入りしていたという。
■死亡記者、知事にも借金
女は身長約150センチ、少し太めの体形だが、店ではひときわ若いホステスだった。「店の隅っこで2人きりになって、女の身の上話を聞かされて、その気になった人も多い」。女と同じスナックに勤めた別のホステスはこう証言する。
「子供ががんになった。一緒に暮らすのなら援助してほしい」。常連客の1人だった鳥取市内の男性(66)は約4年前、女からこう言われ、金を無心されたことがある。
女とはスナックで知り合い、しばらくして交際が始まった。店では5人の子供を抱え、生活に困窮していることなどを何度も聞かされており、男性は生活費や入院費として約500万円を渡した。
実際に女の子供が病気になったかどうか定かではないが、女はその後も「狭心症の手術が必要」などと言っては金銭的な援助を求めてきたという。
死亡した男性記者も交際中に女にせがまれ、1千万円近くを援助したとの話もある。知人らによると、この記者は同僚から借金を重ねただけでなく、取材対象だった当時の副知事の平井伸治知事からも金を借りたことがあった。
平井知事によると平成16年ごろ、この記者が自宅を突然訪れ、女と交際してトラブルになっていることなどを聞かされた。最初は「どうやって解決したらいいか」と助言を求められたが、話し込んでいるうちに「貸せるだけでいいから」と金を要求してきた。
「次の給料日には必ず返す」。そんな口約束で、手元にあった3万円を渡したが、その後も「20万円貸してほしい」と自宅を訪れたことがあったという。「女に相当入れ込んでいるようだった」。この記者はそれから半年後、鳥取市内で列車にひかれ死亡した。
■捜査は長期化の様相
女は鳥取県大栄町(現・北栄町)出身。県内の高校を中退し、大阪で自衛官と結婚。夫との間に1男1女をもうけたが、ほどなく離婚し、子供を引き取って地元に戻った。
現在の自宅は、鳥取砂丘近くにある平屋アパートで、女の勤務先だったスナックの女性経営者が所有。女がスナックで働くのと同時に、入居を申し出て5人の子供と一緒に暮らし始めたらしい。
部屋の間取りは8畳間と4畳の台所、トイレと風呂付き。家賃は2万5千円。別の詐欺容疑で逮捕された男(46)が同居を始めてから隣の部屋も借りるようになったが、一部屋は荷物置き場になっていたという。
近所の住人は「家財道具は軒先に放り出され、自家用車の中にも衣類がいっぱいに詰め込まれていた。男以外の男性が同居していた時期もあり、どうやって共同生活を送っていたのか今でも不思議だった」と首をかしげる。
こんな話もある。女が所有する軽乗用車の中には、大量の睡眠導入剤を入れたポーチもあったという。別の近隣住人の男性は「女から『眠剤あるけどいらない?』って何度も聞かれたことがある。どうして持っているのかと尋ねると、『米子の看護学校を卒業後、大阪で看護師やってたから』と言われ、納得してしまった」と話す。
だが捜査関係者によると、女が看護師だったという経歴はなかったという。ある捜査員は「自分の身の上話も経歴も全部うそで塗り固めたようなもの。彼女が周囲に話したことがどこまで本当なのか、裏を取るだけでも大変だ」と本音を漏らす。
女の周辺で次々に起こった不可解な「死」と「薬」。女をめぐっては死亡男性との間で金銭トラブルが後を絶たず、事件の背景には「金」も見え隠れするが、捜査は長期化の様相を呈している。
捜査幹部は「不審死に女が関与しているのか立証するには、公判維持できるだけの十分な証拠が必要。まずは外堀を埋めていき、核心に迫りたい」と語る。
鳥取県警は、女との間で家電製品の販売をめぐり約140万円の金銭トラブルがあった円山さんについて、殺人容疑での立件を目指し、慎重に捜査を進めている。
「大切な人。すべてがあの人だった。毎朝、毎晩今でも悲しい。一日も早くこの事件の真相を解明して、ひでちゃんの無念を晴らしてほしい」。円山さんと鳥取市内で同居していた女性(62)はそう語り、肩をふるわせた。
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