【シネクラブ】「余命1ヶ月の花嫁」 廣木隆一監督インタビュー
2009/05/12 15:44更新
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《「等身大の恋愛」繊細な心理描写》
ウエディングドレスに身を包んだ女性は、新郎にエスコートされながら、満面の笑顔で教会に立った。女性は、24歳で末期の乳がんに侵され、医師から余命1カ月を宣告された長島千恵(ちえ)さん(1982~2007年)。「明日が来ることは奇跡です」。最期まで生きることの素晴らしさを訴え続けた千恵さんの姿は、全国にテレビ放送され大きな反響を呼んだ。広く知られたドキュメンタリーの映画化という難題に、今回、女性心理を繊細に映し出す手腕を持った廣木隆一(ひろき・りゅういち)監督(55)が挑んだ。
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記事本文の続き 「もっと早く気付いていれば、こうならなかった」。2007年4月、東京都港区の教会で行われた結婚式の模様を1台のカメラが追っていた。千恵さんは、がん検診の大切さを多くの人に知ってもらうため、自らテレビカメラの前に立った。結婚式は、恋人の赤須(あかす)太郎さんが企画したものだった。
残された日々を、寄り添って懸命に生きる千恵さんと太郎さん。2人の姿は07年7月に「余命1ヶ月の花嫁」として放映されて反響を呼び、後に2時間の特番にもなった。今回の映画化にあたり、「静かで力強い作品にしたい」とプロデューサー陣が白羽の矢を立てたのが、廣木監督だった。
■こだわりの「順撮り」
「最初、どうしてこんな素晴らしいドキュメンタリーを映画にするのかと思った。しかし、この話は闘病記ではなく等身大の男女の恋愛だと知り、映画にできると思った」と廣木監督。映画では闘病シーンは驚くほど少ない。「ただの“お涙ちょうだい”の物語にはしたくなかった」と振り返る。「2人が出会い、成長し、『生と死』に真摯(しんし)に向き合う姿を描きたかった」
こだわった手法の一つが「順撮り」というもの。順撮りとは、映画のセットなどに関係なくストーリーに沿って撮影を進めていく方法で、経費がかさむため一般的には用いられることが少ない。だが、「花嫁のシーンをやった後に2人が出会う場面を撮るなんておかしいでしょ」。映画ではこの手法が見事に生き、出会ったときの初々しさや2人の絆(きずな)が深まっていく姿が、自然に表現された。そんな2人を榮倉奈々(えいくら・なな)と瑛太(えいた)が演じた。
■不思議な出会い
ヤマ場のロケ地として、原作にはない屋久(やく)島(鹿児島県)が選ばれた。病気のため自分を見つめ直す旅に出た千恵さんを太郎さんが追い、共に生きることを誓う重要な場面だ。「ドキュメンタリーには千恵さんのメッセージはあるものの、気持ちに触れることはあまりなかった。映画で語っていく上で、彼女がどう思っていたかは絶対に伝えないといけない」。そこで、歩くだけで表情が変わる場所としてこの島が選ばれ、1人で旅をする千恵さんから繊細な心理を巧みに描き出した。
撮影前、廣木監督は太郎さんや、千恵さんの父、貞士(さだし)さん本人に会った。
「彼女との“出会い”はとても不思議な感じがするんです。映画をやっていて、こういう出会いもあるんだなってね」
今年度から文化学院放送・映画学科(東京都千代田区)の特別講師として、映画監督を志す学生の指導にあたる。パンフレットには“映画監督になる方法は教えない”など厳しい言葉も並ぶ。「そんなこと言った?」と笑いながらも、「機材を自由に使って、やりたい放題やっていいらしいんです」とニヤリ。「授業ではなく、学生たちと面白い作品を作れたら」と意気込んだ。
東京・TOHOシネマズ日劇、大阪・アポロシネマ8などで公開中。
(文・写真:今泉有美子/SANKEI EXPRESS)
◇
■ひろき・りゅういち 1954年1月1日、福島県生まれ。82年、ピンク映画「性虐!女を暴く」で監督デビュー。94年、「800 TWO LAP RUNNERS」で文化庁優秀映画賞などを受賞。寺島しのぶ主演の「ヴァイブレータ」(2003年)が第25回ヨコハマ映画祭で主要5部門を受賞。08年は「きみの友だち」など公開。独特の空間描写と音楽センスで、国内外から高い評価を得ている。
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