ガンダムが30年ヒットした秘密 富野由悠季監督に聞く(2)
2009/09/18 15:34更新
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(『ガンダムが30年ヒットした秘密 富野由悠季監督に聞く』より続く)
■民主主義と技術がヒットをつぶしている?
アニメ「機動戦士ガンダム」がロングヒットになったのは、富野由悠季監督をはじめスタッフたちの才能と努力によるところが大きいのは疑う余地がない。しかも、人間対人間、モビルスーツという新ロボットカテゴリーの創出など、斬新さも見逃せない。しかし、ライバルらしき存在は、どれなのか? 探しても見つからない。ガンダムの独走を許してしまった現状について見てみたい。
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記事本文の続き 「不幸なことが一つあります。デジタル技術が発達して、CGワークに偏りすぎています。年々つまらなくなっているのはデジタル技術のせいかもしれません。デジタルの危険性をハリウッドも日本もあまり認識していないように思います。そのために、スタジオワークが喪失しています」
人間が作るというよりは、機械や技術が作るというイメージなのか。やはり人間味がどこか少ないと感じるのではないか。ハリウッドのアニメ映画もCGワークが全盛だ。ピクサーを筆頭に多くのCGアニメが生まれ、そしてヒットを飛ばしている。また、次のようにも指摘する。
「アートやヒットするものは民主主義からは決して生まれてこないと思います。多数決が正しいかといえば違うんですが、全体主義が個人の才能をつぶしている可能性があります。コンピューターはよくできた官僚システム。よくできたシステムは存続を要求してくるんですよね。そして、我々はシステムの中にいるという構図になっています」
技術偏重、経済性優先。いわゆる効率経営ばかりにとらわれてしまうと、ヒットが生まれにくい環境になるのかもしれない。なぜヒットしたかは結局「理由はわからない」とする富野氏だが、少なくとも技術偏重、経済性優先という環境にはいなかった。独立後にフリーとなって作り上げた原案がガンダムだった。
■それでも新しい芽は出てくる
富野氏は、今の教育システムがクリエイターを育てないという持論の持ち主でもある。世界中のアニメ製作の現場でもデジタル化の波が押し寄せ危機にあるとする論を展開しているが、日本の次世代のアニメ製作の担い手たちについて、どう考えているのか。
「アニメやマンガを考えているだけでは、作品が作れるとは思わないでほしいですね。アニメが好きでスタジオに入ってきた人はステレオタイプになってしまう。だから、皆さんが見ている今のアニメというものは必ずしも豊かではないと思います」
いわゆる「専門バカ」を危惧する発言だが、実際にアニメばかりに触れて育った人だけではガンダムを超えることできないということなのだろう。30年という時はあまりにも長かった。だが一方で、富野氏は新しい世代の人たちに希望も持っているようだ。
「これから2~3年、20代後半から30代前半の人々が、まったく違う形のアートなり芸能のスタイルというものを打ち出すのではないか、とも思っています。マイケル・ジャクソンさんを見ればわかる通りです。出てきてから、もう20年以上が経ちます。だから、出てこないわけがないのです。新しい人たちの持っているポテンシャルというものが発露されるのがこれから2~3年、新しい形、違う形での文化論やカルチャー論、アートが現れてくると思っています」
ガンダムを超えるヒット作品の出現を待とう。それと同時に、ガンダムはあと何年生き続けるのか、どこまでのロングヒットになるのか。
■100年ヒットする? ガンダム
ガンダムの主人公アムロ。ガンダムを操縦する少年だが、常識的に考えれば、厳しい訓練を積んでいるわけでもない年端も行かぬ少年が操ることは不可能だ。それを可能にするからこそ「ニュータイプ」という定義になっている。実は、この言葉の意味は、富野氏でさえもわからなかった。
「ガンダムを、子どもがなぜ見た瞬間に操縦できるか、ということについては、超能力者という設定にしました。ただ、超能力者という概念はSFの世界ですでに使い古されていたので、主人公アムロは、ニュータイプという設定にしました。このニュータイプという定義付けがとても難しくて当時はできませんでしたが、最近ようやくできるようになりました」
富野氏も最近、お台場の巨大ガンダムを自身の目で見る機会があったのだという。「単なる兵器の姿ではない」と感じたようだ。ガンダムプロジェクトは、緑による都市再生がテーマ。30年前には、国家間戦争の兵器として誕生したはずのガンダムだが、今や平和のシンボル的な存在でさえもある。
「我々は今環境問題、エネルギーが少ない地球というものに直面しています。現在までの人類の能力論や経済論だけでは、1000年という時間を我々は地球で暮らせないわけです。そういう問題がわかってきた時に、日本人でも人類が生きのびるためには、ニュータイプにならなければならないのではないかという考え方を持つ人が出るようになってきました。30年前のアムロが、ようやくここで定義しつつあります。我々は現在以上の能力を持てる可能性にチャレンジしなければいけません。アムロはガンダムしか操縦できませんでしたが、我々はエネルギーがなくなった地球でも1万年生きのびることができるかもしれない。人にはそういう可能性はあるのではないかというシンボルにニュータイプはなりうるのではないか、ということです」
時代が求める姿に形を変えてきたガンダム。富野氏は同世代の宮崎駿氏と自身を対比して、次のようなことを述べた。
「宮崎駿監督は作家として作品論を言っていますが、ガンダムは作品として完結していないのです、ガンダムはコンセプトしか定義していなくて、実を言うと作品になりきっていないのです。そういう意味で僕は宮崎監督に負けたという敗北感を持っているのですが、根本的に宮崎さんのお話している作品論とガンダムは寄り添っていません」
ガンダムは作品の中だけで生きるものではない。コンセプトとして、みんなが求める姿に進化を遂げながら今後も生き続けていく。だからこそ、ロングヒットになりえたのだろう。(終)
(ゆかしメディア)
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