【最近 お金事情】デフレ克服へ「政治パワー」必要
2009/11/11 11:38更新
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「デフレ」という言葉が新聞紙上で見受けられるようになった。日銀の総裁会見などでも質疑のテーマになっている。しかしこの言葉、なかなか生活実感としてわかりにくいので、一般的にはあまりインパクトを持てないようだ。
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デフレーション、略してデフレは経済用語の辞典では「モノやサービスといった商品の価格が同時に、しかも持続的に下落する経済現象」などと説明される。経済学的にいえば、もっと難しい理屈になるらしいが、問題視されるのは、景気下降を伴う物価下落になりやすい点だ。デフレそのものは、商品価格の下落であり、お金の価値の上昇のことであるから、景気自体の上昇、下降に対応しているわけではない。
■怖いのはスパイラル
景気の上昇時に、例えば好況による円高で輸入物価が安くなり、石油などの原材料費も下がれば、デフレ現象が現れることもある。半面、不況となり、商品の価格を下げないとモノが売れず、安売り戦略でしか企業は生き残れない。そういうデフレ現象は、いっそう不況を深刻にしていく可能性がある。
デフレそのものは、消費者にとって一応、購買力が増すわけだから歓迎するべきことといえる。特に生活必需品の値下がりはうれしい。しかし、こうした商品・サービスを供給する企業にとっては売上高が減少することになり、赤字回避のため経費(変動費)に始まって、人件費や電気代などの固定費の削減にも踏み込まざるをえない。お金の価値が上がることで企業の実質的な債務負担も増える。
ただ、企業戦略として、ピンチをチャンスに変えていく企業もあれば、業界の中での競争に負けて消えていくところも出てくる。その意味でデフレは、あくまでもマクロ経済の用語で、経済全体として雇用数の減少、失業の増加を生み、国民レベルでの消費力が減退していく。これが悪循環として負に陥ることをデフレスパイラルといい、本当の怖さはここにある。
■定義はあいまい
日本は、10年前の金融危機後に経済が疲弊し、不況に陥るなかで、2001年4月に当時の政府が「戦後初めて、緩やかなデフレにある」と認定した。日銀はゼロ金利政策をとり、金融の量的緩和なども行った。その後、景気がわずかにも回復する状況となるなかで、経済・金融政策上、「デフレ克服の定義」が論議となった。それで結局、「物価が基調として上昇していくと見込まれる状況」という極めて抽象的な定義をした。一口に物価といっても、これを動かす要因はさまざまにある。しかも“見込まれる状況”をどう見込むかは立場の違いや見解の相違でなかなか定まらない。そもそもデフレの定義は概念的で、数値的な目安をもたない。そこが問題ともいえる。
その後、消費者物価指数はプラスに転じたりしたが、政府・日銀・自民党の衆議は一決せず、ついに「デフレ脱却宣言」は出ずじまい。昨年の米金融危機が引き金になって日本経済は再びデフレ状態に入った。デフレは一般的に「物価が2年以上程度にわたって持続的に下落する」ことをいうが、日銀によれば来年も下落基調だという。
国内全体の需要と供給能力のギャップは約40兆円あるといわれる。加えて失業率は高止まりで、雇用情勢に改善の兆しは見られない。国民全体の収入増加は見込めない。需給ギャップがこれほどあるということは需要と供給の関係でいえば、価格は下がる。いわば経済原理。つまりデフレはマクロ経済現象だが、ゼロ金利・量的緩和のいまの金融政策だけではもう脱却はできないだろう。これを克服するには国家レベルの新ニューディール政策を発動するなど“政治のパワー”が必要だ。
(編集委員 小林隆太郎/SANKEI EXPRESS)
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