東京駅が復元工事中、その技術に驚く顔を見たい
2011/12/13 15:52更新
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【東京特派員】
赤レンガで親しまれる東京駅はいま、創建当時の姿に復元すべくフル回転で工事中である。駅舎を覆う足場や改札口の仮天井がはずされれば、秋には4階まで吹き抜けのドーム天井が出現する(駅施設の一部は6月)。
時の鉄道院総裁の後藤新平が「なにか世間をあっと驚かせるような建物を」と建築家の辰野金吾に依頼した。さすが「大風呂敷」といわれた後藤らしい。
3つの塔をつないだ荘重な新駅は、フランス流だといわれたらしい。当時の人々がそれ以上に驚いたのは、正面になると思っていた八重洲側が駅の裏手にされ、丸の内側に両翼を広げた華麗なビルができたことだろう。
宮城に向かって「行幸道路」がまっすぐに伸びることになり、丸の内界隈(かいわい)は三菱が「一丁倫敦」と呼ぶレンガ街をつくっていた。まして新駅の名を「東京駅」と称したから、東海道線の起点だった新橋駅も怒った。
今回、JR東日本の好意で北ドームの内部に踏み入った。複雑に入り組んだ足場を伝って最上部に出ると、フィレンツェの教会で見たような美しい彫刻が現れた。
「石膏(せっこう)の彫刻に見えるのはガラス繊維製で、一部に創建当時の石膏も埋め込んだ。デザインは十二支の干支(えと)だったり、秀吉の兜型だったりと和風なんです」
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記事本文の続き 工事区助役の大内田史郎さんが解説してくれた。後藤の無理な注文に辰野の苦労がしのばれる。
私たちが知っている東京駅の赤レンガは、昭和20年5月の戦災で3、4階が焼失したあとに改築された2階建てだった。優雅な美観を誇ったドームは焼け落ちた。
これを大正3年創建時の風格ある建造物によみがえらせようという計画だ。駅舎、ホテル、ギャラリーで総工費500億円。2階までを免震構造で保存し、3、4階部分を復元することになった。
驚くべきは、駅舎が鉄骨レンガづくりで当時の最先端技術が尽くされてはいたが、基礎工事部分に8メートルの松杭1万本が地中に埋め込まれていた。
工学博士の大内田さんは、「松のヤニが水で腐らせるのを防いでくれる。大正時代の技術者の水準の高さを示している」と匠の技に敬意を表する。誰しもこの松杭がどんな形状なのかと思う。
そんな好奇心がある方は、丸ビルの行幸道路側の入り口に出向くことをおすすめする。この玄関ロビーに旧丸ビルに使われた長さ15メートルの松杭が展示されている。腐食もなく、解体時には松の香りが匂うほどだったという。同じような松杭に支えられて、大正12年の関東大震災でもレンガの駅舎は崩れることがなかった。
そういえば、陸前高田の「高田松原」は東日本大震災の津波にのまれたが、たった1本だけが踏ん張った。焼津市にも元禄大津波に耐えた「鳴子の松」が、やはり1本だけ孤高を保つ。関東大震災に耐えた松杭さえもいとおしい。
工事中の駅舎地下に下りると、地下コンクリートとレンガ駅舎の間に大きな隙間が奥にまで広がる。この隙間に350台の免震ゴム、これを横から支える160台のオイルダンパーが設置されていた。彼らが首都直下型地震を迎え撃つ現代の松杭である。
3・11の東日本大震災の際は免震構造がまだなく、大揺れの中で作業員は一時避難を余儀なくされた。この時、地下の松杭たちは、最後の力を振り絞って耐え抜いていたのだ。
後藤新平が来年10月に完成する新東京駅を見たら、その復元技術に目を見張るだろう。後藤の「あっ」と驚く顔が見たい。(湯浅博)
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