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【メディアと社会】ソーシャルメディア楽観論の裏側 渡辺武達

2012/02/08 13:14更新

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 現在の日本では、携帯電話、スマートフォンを含め、家庭のインターネット使用率が90%を超え、なかでも10代から50代までのSNSソーシャルメディア(Blog、mixi、twitter、facebookなど)の利用が活発化している。SNSは従来のホームページ閲覧とは違い、相手が分かる小集団のコミュニケーション形式が保障されていることから、今次の災害現場でもきめ細かいボランティア活動での連絡などを容易にする一方で、とくに10代後半から20代にかけての若年層による犯罪自慢や有名人への誹謗(ひぼう)中傷、プライバシー侵害、果ては金銭詐欺などの反社会行為にも使われている。

 ■「武器」にも不正にも

 このSNSが世界的に大きな話題になったのはこの1年ばかりのことである。チュニジアに始まり、エジプトリビアと続く中東革命の花形とされたからだ。シリアやイエメンではいまなお、政府による情報統制と戦う「武器」となり、中国ロシアなどでも、その統制が国家の重要課題になっている。

 もちろん、国際情報撹乱(かくらん)のためにも利用される。2月3日夜のTBS系全国ニュースの報道によると、在北京イラン大使館名義のブログが偽物と発覚した。背景には、イランの核兵器開発に圧力をかけるため、米国主導でイランからの原油輸入中止の呼びかけにEU欧州連合)や日本などが賛同し、反対に中国がそうした措置は世界を不安定にすると主張するという対立の構図がある。

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記事本文の続き その点、レストランのランキングを挙げるため、ブログへの「やらせ」書き込みをする会社が出てきたなどという日本の不正はスケールが小さい。だが、そうした日常生活レベルのマイナス面も放置しておけない段階まで来ているのも確かである。

 ■性善説では対応不能

 最近では、大手電器量販店が従業員に対して、ソーシャルメディアを使った反倫理的情報の書き込みを禁ずる通達さえ出した。そうしたことを憂慮し、日本マス・コミュニケーション学会では1月25日、「若年層のSNS利用に関する倫理規範の構築について」と題したメディア倫理法制研究部会ワークショップを同志社大学で開催した。

 この問題に詳しい中谷聡氏(京都光華大学講師)が問題の実情をまず説明し、解決すべき問題点を列挙した。それを受け、パブリックジャーナリズム論で知られる津田正夫氏(立命館大学特任教授)が討論者として立ち、これまでのインターネットに強かった一方向的な情報の流れと、SNSの親密圏との違いを明確にしながら、(1)「反倫理」「有害」とは何か(2)「反倫理」と「有害」の認定者は誰か(3)ルール・掟(おきて)、マナーの設定の是非(ぜひ)(4)メディアの事業者や監理者の商業的利用傾向の危なさ-といった基本的なことから議論すべきであると指摘した。

 司会は筆者が務めたが、学会での共通の関心はメディアの新技術の利用にあたり、その利便性をいかに公益性の増加に振り向けられるかにある。巷間(こうかん)の議論にある、人間の理性を信じれば、悪用は自然と少なくなるとする完全解放論はもはや夢だ。研究会には関西地区の新聞やテレビの経営陣、現場の記者も多く参加し、マスメディアとSNSの特性を生かした相互乗り入れとコラボ、そこに至るまでの各メディアの特性の社会的学習の重要性や総合的な情報アカウンタビリティにまで話が及んだ。

 ■未来へ方向性づくり

 メディアの発展史にはいくつかの社会的法則がある。第1は、新しい技術の大規模開発は国家利益か軍事利用のために行われるということ。たとえば、19世紀の電信は7つの海に広がった英国の植民地支配に必要であったからだし、現代のインターネットは冷戦時代、ソ連からの核攻撃を恐れた米国が情報拠点の分散を図ったものだ。第2は、それらが社会的に普及するのは販売利益が見込まれるときだけであること。第3は、新しいメディアはそれまでになかった社会問題を同時にもたらしやすいということだ。

 活版印刷の聖書はローマ教皇庁による神のことばの独占的解釈を許さず、宗教改革に結びついた。テレビは活字読者の能動的態度を受動的に変えた。そのような関係枠の中で、SNSソーシャルメディアは私たちに何をもたらすのか。過去を振りかえることは出来ても過去は変えられない。しかし、今私たちがどうするかで、私たちは未来への方向を創ることはできる。

 (同志社大学社会学部教授 渡辺武達(わたなべ・たけさと)/SANKEI EXPRESS

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