戦後初の国産「61式戦車」 海を渡りヨルダンで展示へ

【国際情勢分析】

 陸上自衛隊で活躍した戦後初の国産戦車「61式戦車」が、中東の穏健勢力として知られるヨルダンに貸与され、近く同国の王立戦車博物館に展示される。

 ヨルダンのアブドラ国王から「日本の古い戦車を供与してほしい」と要請を受けた日本政府は、「日・ヨルダンの友好の証」として61式戦車の貸し出しを決めた。政府関係者によると、こうした協力で戦車が海外に行くのは初めての事例だという。

 貸与された車両は、陸自の滝ケ原駐屯地(静岡県御殿場市)で展示されていた退役済みの61式戦車。エンジンを取り除き、主砲に詰め物をするなど戦車としての機能は使えないようになっている。8月6日に横浜でヨルダン側に引き渡され、9月上旬に同国に到着する予定だ。

 61式戦車は1961年に制式化された陸自の主力戦車で、計560両が生産された。待ち伏せを主戦法とする考え方が設計で考慮され、鉄道輸送ができるように車体幅を3メートル以内に抑えるなど、日本独自の工夫が盛り込まれている。

 90ミリ戦車砲を装備し、重量は約35トンで、4人乗りだ。それまで米軍の戦車に頼っていた自衛隊にとっては大きな存在だった。

 防衛装備庁は、61式戦車がヨルダンで展示されることについて、「日本の技術力のPRになる」と期待する。当面の貸与期間は1年だが、ヨルダン側から要望があれば延長する方針だ。

 今回の61式戦車の貸与は、平成30(2018)年4月にヨルダンを訪問した河野太郎外相が、アブドラ国王と会見したときに戦車の供与を打診されたことから始まった。

 戦車に詳しいアブドラ国王から、「日本の古い戦車を供与してほしい」と頼まれた河野氏は要望を持ち帰り、防衛省や防衛装備庁など日本政府内で協議が進められ、貸与が決まった。

 アブドラ国王と河野氏の会談に関する当時の日本政府発表は、テロ対策の協力や中東情勢、北朝鮮情勢などが協議されたと説明していて、戦車の要望については具体的に盛り込んでいない。

 日本にとって防衛装備品の輸出は難しい案件で、友好国の国王の要望だとしても、二つ返事で決めることができないことは容易に想像できる。

 日本政府が戦車の貸与を決めた背景には、伝統的な友好関係だけでなく、日本の外交・安全保障戦略におけるヨルダンの重要性がある。全方位等距離外交を進めるヨルダンは、中東で周辺の国や部族などとパイプがあり、和平に前向きだ。

 日本が、イスラエルとパレスチナの対立解消に向け、パレスチナの経済的自立を支援する農産加工団地の事業でヨルダンの協力を得ている。

 また、資源の乏しい日本にとって中東はエネルギー調達で欠かせない地域。ヨルダンとの関係を強化することは、和平推進や対テロ対策、エネルギーの安定調達など中東における日本の戦略を強化することにつながる。(外信部 坂本一之)

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