逮捕、自宅軟禁の記者を解放 ロシア政府

 【モスクワ=小野田雄一】モスクワ市の警察当局がロシアで有名な記者、イワン・ゴルノフ氏(36)を麻薬販売容疑で逮捕したことに関し、露政府は11日、捜査の中止と自宅軟禁措置にしていた同氏の解放を決定した。ゴルノフ氏は権力側や大企業の不正を掘り起こす調査報道で知られ、メディアが当局側を批判していた。一連の騒動は、支持率低下が続くプーチン政権とメディアの関係に生じつつある変化を浮き彫りにしているとの指摘も出ている。

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 警察当局は6日にゴルノフ氏を逮捕し、同氏の所持品のバッグから違法薬物が見つかり、自宅からコカインも押収したと発表した。

 ゴルノフ氏は「ロシア最高の調査報道記者の一人」と呼ばれている。同氏が所属するネットメディア「メドゥーザ」によると、ゴルノフ氏はこれまでにモスクワ市や露連邦保安局(FSB)幹部らの関与が疑われる違法ビジネスを告発する記事などを発表。逮捕前には“取材対象者”から脅迫を受けていた。

 同氏は容疑を「でっち上げだ」と否認。実際、逮捕後の検査では同氏が薬物に触れた痕跡は一切見つからなかった。さらに当局側が「家宅捜索時に撮影した」とする薬物などの写真の大半が無関係だったことも判明。当局側は「単純ミスだ」と釈明していた。

 不審点の多い逮捕を受け、同氏の記者仲間らは一斉に反発。10日には露有力3紙の「ベドモスチ」「コメルサント」「RBK」が、1面に「私、私たちはイワン・ゴルノフだ」との共通の見出しを掲げて逮捕を批判した。見出しの統一は露メディア史上初の試みだった。

 ベドモスチは「ロシアの捜査当局では、特定の人物の排除や実績づくりを目的とした薬物事件の捏造(ねつぞう)が横行している」と当局の体質を糾弾。プーチン政権に近い新聞社さえも批判的に報じた。

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 ゴルノフ氏逮捕から5日後の11日、警察機構を統括するコロコリツェフ内相は、証拠に問題があるとして捜査の中止と自宅軟禁措置の解除を決定。プーチン大統領にモスクワ市警察当局トップらの解任も求めた。決定に社会的反発が影響したのは確実だが、今後、露捜査当局の体質が改善するかは不透明だ。

 プーチン政権下のロシアでは、政権に近い人物がメディアの経営権を握り、人事や編集に介入するなどメディア統制が進められた。

 しかし、3月に施行された「政権への不敬・フェイクニュース禁止法」をめぐっては、多くのメディアが「報道の萎縮につながる」と反発。政権の支持率低下と歩調を合わせるように、こうしたメディアの政権離れとも呼べる現象も起きている。11日付の有力紙「独立新聞」は、「今回の反発を政権側は予期していなかった。政権に批判的な新たな社会環境が形成されている」と指摘した。

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