イラン反政府デモ 見えぬ打開策…武力弾圧踏み切るか

 イランで物価高への不満を機に起きた反政府デモは、大統領選の不正疑惑に端を発した2009年のデモ以降では最大規模となった。このときはデモの主導者がおり民衆の要求も明確だったが、今回は国のかじを取る中枢へと不満が拡大した上、各地でデモが同時多発的に進行している形だ。打開策が見えない中、政権側が事態収束に向け本格的な武力弾圧に踏み切るかが焦点になってきた。

 発火点は先月28日、北東部マシャドで起きた反政府デモだった。イランで信仰されるイスラム教シーア派の聖廟があるマシャドには、昨年の大統領選で穏健派のロウハニ現大統領の対抗馬として保守強硬派に支持されたライシ前検事総長が、管理を任された宗教関連財団もある。

 このため、欧米メディアでは当初、ライシ師と関係が深く国内に大きな影響力を持つ革命防衛隊が、ロウハニ師の求心力を弱体化させるため、取り締まりの手を緩めたとの観測が出た。

 しかし、デモは急速に各地に飛び火して若者が暴徒化した。ソーシャルメディアにはシーア派最高指導者ハメネイ師の横断幕を引きずり下ろして踏みつける映像も流れ、1979年以来のイスラム革命体制そのものが問われかねない事態となっている。

 通貨リヤルの対ドルレートは急落し、卵など基本的な食材も急速に値上がりしている。ただ、経済を上向かせる特効薬が見当たらないのも事実だ。

 ロイター通信に識者が語ったところでは、革命防衛隊や宗教関連団体は国内資産の6割に関与しているとされ、経済改革の大きな障害になっており、ロウハニ師が打てる手段はほとんどないとしている。同師への民衆の期待がしぼみ、反米を掲げる保守強硬派が大統領の“失政”を批判し続ければ、経済改革の実現がますます遠のくという悪循環に陥る事態も予想される。

 イランを敵視してきたトランプ米政権はデモを支持する姿勢を強調しているが、対米不信は国民の間でも根強く、あまり効果はないとの見方が多い。それでも、これまで主に男性の若者に限られていたデモ参加者が社会の各層に広がるようなら、政権は大きな困難に直面することになる。 (佐藤貴生)

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