内戦勃発になりかねないウクライナ危機の本質 佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)

 佐藤優氏は東部・南部住民の間でもロシア併合を望む勢力は限定的と指摘。露の軍事介入に反発し、民族意識の高揚から内戦となる恐れがあるという。

 ウクライナをめぐりロシアは露骨な帝国主義政策をとっている。ロシア国籍を持つ者の保護を口実に事実上、ウクライナ南部クリミア自治共和国で軍隊を展開しているが、これは明白な主権侵害だ。G7(日米英仏独伊加)首脳は、「ロシア連邦によるウクライナの主権と領土の一体性に対する明確な違反を共に非難する」という声明を発表したが、当然のことだ。

 1968年8月、「プラハの春」と呼ばれる民主化運動を粉砕するためにソ連などワルシャワ条約機構5カ国軍がチェコスロバキアに軍事介入した。このときソ連は「社会主義共同体の利益が脅威にさらされる場合には、個別国家の主権は制限されうる」という制限主権論を唱えた。この強弁は、当時のソ連共産党書記長の名をつけブレジネフ・ドクトリンと呼ばれた。

 もはや社会主義共同体は存在しない。そこでロシアはブレジネフ・ドクトリンを一部変更し、「ロシア国家の死活的利益が脅威にさらされる場合には、近隣諸国の主権は制限されうる」という新たな制限主権論に基づいてグルジアの南オセチア自治州、アブハジア自治共和国に軍事介入し、2008年に両地域を「独立」させ、保護国にした。

 今回、ロシアはこの論理に従ってクリミアを保護国化しようとしている。ロシアのこの行動は、国際秩序を著しく不安定化させる引き金となりかねないので、断じて認められない。

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