欧米の本音?錦織に期待するのは“いい負け犬”役
【スポーツ異聞】
「週刊現代」の2月14日号に掲載されたテニスの錦織圭の記事が波紋を広げている。2014年全米オープン選手権で、日本人として初の準優勝を果たし、世界ランキング5位に躍進する姿に日本中が試合ごとに一喜一憂して関心は高い。その躍進ぶりは海外でも受け入れられていると思われがちだが、記事は錦織に対する「人種差別的な行為」を指摘する衝撃的なものだ。米雑誌ベテラン記者が「(海外では)誰も錦織に興味はない」と解説。外国人の惜しみない拍手は「いいアンダードッグ(負け犬)」として「観客が望む通りのシナリオを錦織が描いてくれたから」だという。錦織だけはない。他のスポーツでも日本人選手が「差別的行為」を受け、海外から身を引いた例もある。「欧米」中心主義のスポーツ界の「闇」が垣間見える。
記事は『錦織圭とコーチ(マイケル・チャン)が受けた「人種差別」 よく耐えた、よく乗り越えた 全豪オープン、無念のベスト8』と題して掲載された。
1月の全豪オープン準々決勝の出来事が焦点となっている。錦織は14年大会の覇者スタン・ワウリンカ(スイス)に6-3、6-4、7-6でストレート負けし、日本中が失意に包まれた。しかし、同誌は「現地で試合を見ていた海外のテニス・ファンの反応は、日本人とはまったく違うものだった」と記す。
そして、米国で人気のスポーツ誌「スポーツ・イラストレイテッド」で、テニスを専門に取材するベテラン記者のジョン・ワーサイム氏の衝撃的な証言が続く。
「日本では大人気だと聞いていますが、正直に言って、錦織は海外のテニス・ファンの心はまったく掴んでいません。というより、誰も錦織に興味がないんです。欧米人が期待し、関心を持っているのは、錦織ではない。自らの国の選手、つまり欧米のスターたちだけです」と解説する。
そうは言うが、テレビの映像を見る限り、観戦する外国人も日本人同様に錦織の健闘を応援しているように映っている。では、なぜ錦織の試合が喜ばれたのか。「それは彼が負けたからでしょう。欧米人は自分たちのスターに懸命に立ち向かった末に敗れる、いいアンダードッグ(負け犬)が大好きなんです。観客たちが惜しみない拍手を送ったのは、彼らが望む通り、そんなシナリオを錦織が描いてくれたからですよ」と背景を解き明かす。
悲しくなる言葉だ。つまり、海外のファンが錦織に期待するのは勝利ではなく、選手の「引き立て役」に過ぎないというわけだ。まさに屈辱的としか思えないような話だ。
記事は、13年12月から錦織のコーチを務めるマイケル・チャン氏が現役時代に実力をなかなか認められず、コートを縦横に駆け回るプレースタイルを捉えて「バッタ」や「ドブネズミ」といったあだ名を付けられたとも記す。
錦織に対して、記事の指摘を裏付けるような出来事がすでに13年の全仏オープンで起きていた。
それは13年6月1日に行われた3回戦。錦織はフランスのブレワ・ペアと対戦。第1セットを6-3で先取して迎えた第2セット。第10ゲームでペアはコーチにアドバイスを受ける違反を犯した。主審はペナルティーによる失点を宣言した。
すると、地元のファンは主審と錦織に大ブーイング。錦織が構えを取っても騒ぎは鎮まらず、動作を中断し苦笑いを浮かべしかなかった。通常ならば、選手が構えれば静粛を保つのが「観戦マナー」の大原則。しかも、錦織に落ち度は全くない。テニス人生初とも言える大ブーイングに対し「こんなブーイングの嵐を受けたのは初めてだった」と試合後に振り返っていた。このセットは落としたが、結局、勝ち抜けて4回戦に進出。日本男子として1938年の中野文照以来75年ぶりの快挙となったが、何とも後味が悪い。
全仏では、黒人のセリーナ・ウィリアムズ(米国)も判定に不満を示す仕草をしただけで観客の不興を買い、ファーストサーブを外すたびに拍手され、ミスには大歓声が起きた。敗れたセリーナは試合後の会見で抗議の涙を流した。
深刻な「人種的差別」を受けた選手もいる。サッカーのスロバキア2部リーグMSKリマフスカ・ソバタに所属していた中村祐輝は13年1月30日のブログに、現地で人種差別を受けて生活できなくなったとして、帰国したことを明かしている。
ブログには「人種差別的なことを受けて生活できなくなり帰国しました」とし「この時代にそんなことするか?って思うことがたくさんありました」と告白。「試合前後にはサポーターから鬼の形相で自分の名前だけ叫ばれて、中指を立てられ…。チームメートは誰も助けてくれない。そこに加担するかのような選手もいました…」と事態を赤裸々に綴る。そして「チームに脅迫みたいなものが来てしまい、責任を持てないからということで帰国してきました」と激白した。
この事案はAFP通信に取り上げられたが、リマフスカ・ソバタのスポーツディレクターは「人種差別の存在を把握しておらず、そのような事を目撃したことがない」と語った。管理能力を問われても仕方のないコメントである。
まだある。元日本代表の中村俊輔はスコットランド・プレミアリーグ、セルティックに所属していた08年にライバル、レンジャーズのサポーターから「ナカムラが俺の犬を食った」と書かれた横断幕を掲げられた。英テレグラフ紙は「誤った侮辱」と非難した。
週刊現代の記事に関して、日本のネットユーザーは「もともと白人の社交スポーツだからな。女子のウィリアムズ姉妹とかも苦労したんだろうね。実力でねじ伏せて世界を黙らせたけど。今でもなんかヒール扱いのところがあるかな」「テニスにこんな差別があったとは知らなかった」「ヨーロッパ発祥のスポーツは欧米人が勝たないと面白くないんだよね」などの意見を寄せていた。
