舞の海の相撲俵論 稀勢の里、1年間休場してはどうか

 佳境を迎える名古屋場所は最多勝利記録更新を目前にしている白鵬だけでなく、宇良や北勝富士ら新鋭の健闘が光る。それでもどこか心におりがたまっているようだ。2場所連続途中休場した、稀勢の里のことが頭から離れない。

 けがからの復活を期して臨んだ今場所。患部の左腕がほとんど使えず、5日目に3敗目を喫した上に左足首の靱帯(じんたい)も損傷し、休場へと追い込まれた。

 現役時代の辛い思い出が脳裏をよぎる。平成6年名古屋場所で私は貴ノ花(のちの横綱貴乃花)や武双山、魁皇らを倒し、新三役を決めた。絶頂期にあった続く秋場所の2日目。貴闘力にはたかれ、勢いよく左手をついてしまったとき、ばちんと何かが切れた。今までに聞いたことがない。張り詰めたロープが断たれるような音がした。

 支度部屋に戻り、風呂場で桶(おけ)をつかもうとしてもこぼれ落ちてしまう。痛みはないが、力が入らない。翌朝起きたときには、左腕全体が紫色に染まっていた。

 医師の診断は「左上腕二頭筋の断裂」。以降、左手でまわしを引きつけてもすぐに離れてしまう。幕内で闘い続けるために、それまでの左下手からではなく、右上手を軸に攻める取り口への修正を強いられた。今でも左右の腕の感覚はまったく違う。

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