稀勢の里はいま、何を思うのか。初めてのかど番は脱出したが、千秋楽は豪栄道に完敗し、9勝6敗。賜杯争いに加われず、初優勝、横綱昇進でも鶴竜に先を越される形となる。
「やっぱり悔しい。自分の責任でもある」。胸の内にある苦い思いを明かした。
先場所痛めた右足親指の負傷が完治しないまま臨んだ今場所。10日目に勝ち越したが、11、12日目の日馬富士、白鵬戦で連敗した。合口の良い13日目の鶴竜戦の黒星は「完全に負けた感じだった」と認める。
鶴竜は一度で綱を引き寄せた。対照的に、和製横綱誕生の期待を一身に背負う稀勢の里は昨年名古屋場所、今年初場所と2度綱取りに挑んだが、いずれも前半戦で崩れて果たせなかった。
横綱を真っ向勝負で倒す地力はある。あとは目の前の好機をつかむための強い精神力がほしい。
27歳は「横綱が2人から3人になれば、自分にかけられる期待も大きくなる。刺激になるし、もっとやらなきゃいけない」。この屈辱を力に変えてみせる。(藤原翔)