迫るブーメラン…疑惑から逃げられぬ玉城沖縄知事

【沖縄取材の現場から】

 沖縄県の玉城デニー知事が県議会で、県の発注事業をめぐる疑惑を追及されている。玉城氏の支援者が沖縄事務所代表を務める「ペーパーカンパニー」に対し、知事の意向を忖度(そんたく)して2400万円超の事業を発注した-。自民党はこう主張し、知事を辞任に追い込むことも視野に入れている。現時点で疑惑に決定的な証拠がなく、玉城氏自身は余裕の表情だが、平然としていられない事情もある。

 「知事のクビを取れれば最高だな」

 自民党県連幹部は9月30日、県議会で同日浮上した県発注事業をめぐる疑惑に関し、こう息巻いた。自民党は地方自治法に基づく調査特別委員会(百条委員会)の設置も求める。

 問題となっているのは、県が山形県寒河江市の社団法人「子ども被災者支援基金」が代表を務める共同事業体に発注した有識者会議「万国津梁会議」の支援業務(事業費2407万7千円)だ。玉城氏肝いりの会議で、米軍基地の整理・縮小などをテーマに5月30日から会合を重ねている。契約日前日の5月23日には、玉城氏と受注業者が那覇市内で会食していることも発覚した。

 ■忖度発注と倫理違反

 自民党が主張する疑惑は、主に2点ある。

 1つは、玉城氏が業者選定に介入したか、県職員が知事の意向を忖度したことにより、玉城氏の選挙活動を手伝った支援者に事業を発注したのではないかという疑惑だ。県は受注要件を県内に事務所を置くこととしていたが、支援基金が沖縄事務所を開設したのは玉城氏が知事に就任した後の1月14日だった。

 事務所のスタッフは玉城氏の女性支援者1人のみだ。事業の説明会に6社が参加したが、最終的に応募したのが支援基金のみだった経緯も、明らかになっていない。

 支援基金の沖縄事務所は那覇市内の住宅のような建物で、玉城氏の支援者が理事を務める特定非営利活動法人「新外交イニシアティブ(ND)」も同じ住所に沖縄事務所を置く。NDは玉城氏が全国各地で基地問題を訴えるキャラバンを受託している。同じ人物が関係する複数の団体が、玉城氏肝いりの事業を相次ぎ受注しているのだ。

 もう1つの疑惑は、5月23日に開かれた知事と受託業者の会食が、県の「職員倫理規程」に抵触するというものだ。規程では県職員が関係業者と会食することを禁じている。

 玉城氏は特別職なので規程の対象外だが、会食には県辺野古新基地建設対策課の職員も同席しており、全国キャラバンもこの職員の所掌事務に含まれている。職員は自身のフェイスブックで、知事と受託業者の会食の写真をアップし、その後に削除している。

 ■追及、どこ吹く風

 疑惑を追及しているのは自民党だけではない。公明党、日本維新の会も県議会で玉城氏に説明を求め、知事を支持する共産党や側近県議も反省を促した。まさに四面楚歌となった玉城氏だが、さほど動じる様子はない。

 玉城氏は2日の県議会で「自ら襟を正して、県民の疑惑や不信を招くことのないように、客観的かつ公正な県政運営を確保するよう努めてまいりたい」と釈明したが、最後まで謝罪の言葉はなかった。それもそのはず。現時点で忖度発注に関する確たる証拠が存在しないのだ。

 いくら玉城氏と親密な関係にある人物が県発注事業で利益を得たとしても、それだけで玉城氏や県職員が不当に「お友達」に便宜を図ったと決めつけることはできない。玉城氏は、会食の時点で支援者が万国津梁会議支援事業を受注したことを「全く存じておりませんでした」と述べ、業者選定への指示や圧力を否定している。

 ■迫るブーメラン

 玉城氏や県幹部は、県発注事業をめぐる忖度や不当介入はなかったと説明しており、なかったことを証明するのは「悪魔の証明」と呼ばれるほど難しい。この点で、玉城氏をめぐる疑惑は、安倍晋三首相をめぐる「モリカケ(森友・加計学園)問題」と似通う。

 だが、玉城氏は悪魔の証明をしなければならない特別な責任を負っている。

 「安倍首相は、なかったことがあったことを証明しなさいというのは悪魔の証明だと言った。しかし、あったことをなかったことと言うのは悪魔の所業だ!」

 衆院議員だった玉城氏は、平成30年5月25日の衆院内閣委員会でこう迫った。悪魔の証明を求めていたのだ。過去の発言がブーメランとなって自らに迫っている。

(那覇支局長 杉本康士)

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