北朝鮮拉致 「北朝鮮は何もない…」捕らわれた被害者の戸惑い 日本人が同胞を拉致した「異常」な現実が今も

 一方、石岡さんと森、若林両容疑者がスペインで一緒に撮影した写真が残り、石岡さんの偽造旅券が北朝鮮工作員らの活動に悪用されたことも判明。日本で潜伏中、摘発されたメンバーの元妻は公判で拉致への組織的関与を認め謝罪した。

 公安関係者は、工作員教育係を獲得するため日本国内で実行された拉致に比べて、欧州での拉致は「ゆがんだ『革命思想』を実現するため、北朝鮮に指示された日本人が同胞を連れ去った異常性がある」と話す。

 松木さんの姉、斉藤文代さんは「薫が自ら進んで北朝鮮に行くわけがない」と憤る。5人きょうだいの末っ子で待望の男児だった松木さんは「物静かで賢くて本当に優しい子だった」。京都外大大学院に進み、スペイン語に磨きをかけるため欧州へ渡航。将来は教授を目指し、婚約者もいた。

 平成26年、92歳で死去した母のスナヨさんは、斉藤さんが「薫に会いたいでしょう」と声をかけるたび幾度も死のふちからよみがえった。「薫を迎える家族がおらんといかん。私は倒れるまで頑張る」。自らも病と闘う斉藤さんはつぶやいた。(中村昌史)

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