新型コロナ、健康不安… 竹島問題 進まぬ現状に焦燥感

 韓国による不法占拠が続く竹島(島根県隠岐(おき)の島町)。日韓両国の関係は冷え込み、問題が解決する気配すらない。22日に「竹島の日」の記念式典が開かれたが、日本は不法占拠の不当性を国内外に地道に訴え続けるしかないのか。日本人漁師の竹島でのアシカ猟をめぐる語り部の話を動画配信する試みが始まった一方、新型コロナウイルス禍や健康不安によって伝承活動がままならない関係者もいる。

 「アシカの脂でロウソクの代わりにした」「アワビの内臓を塩辛にした」。戦前、竹島周辺で取れる海の幸を地元の漁師はさまざまに利用していた。

 領土問題を研究する「日本国際問題研究所」(東京)は昨年6月、語り継がれる証言を収録し、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開し始めた。

 第1弾で登場したのは隠岐の島町の佐々木恂(じゅん)さん(87)。明治38年の島根県編入以前から竹島のアシカ猟に関わり、この道の「パイオニア」と呼ばれた石橋松太郎(1863~1941年)の孫だ。

 動画で佐々木さんは、アシカの皮を敷物にしたり、島内で酒を造ったりしたという、祖父がよく聞かせてくれた竹島の話を紹介した。「国や島根県のためにお手伝いできたことを誇りに思う。竹島は日本の領土に間違いないし、島根県の財産。未来に向けて一人でも多くの皆さんに発信したい。命の限り、頑張りたい」と訴える。

 隠岐の島町では、竹島で実際に漁労をした人は亡くなり、その孫も高齢化が進む。佐々木さんもさまざまな証言を若い人たちに伝えようと語り部を担ってきたが、体調を崩したため、しばらく語り部から遠ざかっている。動画は竹島を語れる世代から若い世代に記憶をつなぐのが狙いだ。

 研究所から聞き取り調査を依頼されている島根大の舩杉力修(ふなすぎりきのぶ)准教授(歴史地理学)は「記録で見るのと本人が話すのを聞くのとでは説得力が違う。幅広い人に竹島を知ってもらいたい」と話す。

 竹島で生息していたニホンアシカを同町の久見地区ではメチと呼んだ。絵本「メチのいた島」の作者の杉原由美子さん(77)も、新型コロナの感染拡大に加え、自身の体調不安もあり、ここ2年間はほとんど読み聞かせの活動ができていない。

 杉原さんは竹島でアシカ猟などを行った竹島漁猟合資会社の代表だった八幡長四郎(1879~1949年)の孫。杉原さんは東京の小学校で教師を務め、平成20年に地元に戻った。漁業関係者から竹島での漁業について話を聞いたのをきっかけに絵本の制作に取り組み、25年2月、「メチのいた島」を自費出版した。

 その後、長四郎の孫として読み聞かせの活動を決意。小学校など80カ所以上を回ったが、昨年春に一時体調を崩した。「本人の言葉でないと思いまで伝わらないという一心で続けてきたが、これからは皆さんの期待に応えられるか分からない。若い人たちがそれぞれのやり方で竹島を伝えていってほしい」と話した。

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