「やめる勇気」悩む現場 組み体操事故、神戸で相次ぐ

 秋の運動会シーズンを前に、神戸市立小中学校で組み体操の練習中に骨折するなどの事故が相次ぎ、神戸市長が今月、ツイッターで市教委に中止を呼びかける事態に発展した。巨大な「ピラミッド」や「タワー」での高所からの落下事故を防ぐため、段数を減らしたり、中止したりする動きは全国で進む。一方で、2人組の倒立(逆立ち)まで廃止すべきなのか、現場には戸惑いも広がっている。(木下未希)

市長VS市教委

 《教育委員会、そして校長先生をはじめ小中学校の先生方には(組み体操を)やめる勇気を持って下さい》。神戸市の久元喜造市長は9日、市立小中学校で組み体操の練習中に骨折を含む事故が相次いだとして、ツイッターで組み体操を中止するよう求めた。事故は27日時点で骨折5件を含む43件となった。

 久元市長は8月、市教委に安全が確保できないと判断した場合、組み体操の実施を見合わせるよう文書で要請。これに対し、市教委は「練習が始まった学校も多く、中止は混乱を招く」と実施を決断していた。

 市長の中止要請に強制力はなく、市立小中学校では今秋、168校中92校が運動会で組み体操を実施する予定だ。市教委の担当者は「組み体操に教育的意義を感じている学校は多い」と強調。「今年の事故の多くは、倒立など2人組の技で起きたもの。そもそも倒立は学習指導要領に明記され、授業でやらなければならない。運動会で組み体操を中止しても事故を減らすことにつながるのか」と疑問を示し、来年度以降の対応を決めかねている。

兵庫がワースト

 神戸市を含む兵庫県の組み体操の事故件数は、全国的にみても突出している。

 日本スポーツ振興センター(東京)の災害共済給付件数に基づく大阪経済大の西山豊名誉教授の統計によると、平成29年度の全国の小中学校の組み体操事故は4418人。このうち兵庫は全体の1割以上を占める566人で、3年連続で全国ワーストだった。

 また、兵庫県教委の調査で、昨年度に県内で起きた事故285件のうち、3割以上がピラミッドなどが原因と判明。県教委は今年1月、ピラミッドの高さを小学校3段、中学校4段に制限するよう通知した。

 これを受け、同県西宮市では、毎年11月に開催する市立中学校の連合体育大会で昭和56年から続いてきた「5段タワー」の見直しを検討。兵庫県でも減段の動きは着実に広がっている。

禁止技規定を

 組み体操自体の中止に踏み切る自治体は、関東を中心に増えている。千葉県柏市は平成28年度から市立小中学校62校で組み体操の全面中止を決定。同県松戸市や野田市、流山市など近隣自治体も相次いで中止した。

 関西でも、大阪市が29年度からタワーとピラミッドの実施を全校で中止した。制限のなかった大阪府東大阪市では今春、市立小学校3校が6月の運動会で7段ピラミッドなどに取り組もうとしていたことがインターネット上などで問題視され、減段するに至った。

 組み体操に詳しい名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「全面中止となると(学習指導要領に含まれる)倒立などもできなくなる可能性があるなど、学校現場に混乱を招きかねない。どの技を禁止するか明確な規定を設けるべきだ」と指摘。また、「段数を制限しても『移動ピラミッド』など、形を変えて危険な種目に取り組む学校がある」とし、「学校現場で安全な技の指導方法などを勉強すべきだ」としている。

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