がん死因第6位「胆道がん」 現状は承認3薬併用の治療法のみだが…分子標的薬の開発が進行中

 「胆道がん」は、国内で年間約2万3000人の発症と推計され、肺がん発症の約12万人と比べてはるかに少ないが、がん死因第6位で、難治性のがんのひとつ。20世紀には「効く薬がない」といわれたが、2006年に「ゲムシタビン」という治療薬が薬事承認され、今世紀は他の薬剤との併用療法が盛んに行われるようになった。

 肝臓の中で作られた胆汁(消化吸収を助ける働きを持つ)は、肝臓内の胆管を通って胆のうで備蓄され、必要に応じて十二指腸につながる胆管へ放出される。この胆管と胆のうにできるのが胆道がんだ。

 「胆道がんの治療は、今のところ日本では、ゲムシタビン、TS-1、シスプラチンの3剤を併用する治療法しかありません。ただし、ゲノム異常(遺伝子変異)に基づく分子標的治療薬の開発、いわゆるプレシジョン・メディシン(個別の精密医療)が進行中で、その有効性も期待されています」

 こう話すのは、国立がん研究センター東病院肝胆膵内科科長の池田公史医師。1990年代から肝胆膵領域の薬物療法の開発に携わり、日本を代表する臨床腫瘍医の一人である。

 胆道がんのゲノム異常のひとつとして、「IDH遺伝子変異」が知られている。IDH変異は、脳腫瘍の神経膠腫(こうしゅ=グリオーマ)で生じやすく、IDH阻害剤の開発も進んでいる。海外では、IDH変異を有する胆道がんに対するIDH阻害剤の治療開発が行われ、有効な結果が報告されている。また、HER2の遺伝子変異・増幅やFGFR融合遺伝子なども、胆道がんで見られることもわかった。

 HER2は乳がんで起こりやすい遺伝子・増幅であり、分子標的薬「トラスツズマブ(商品名・ハーセプチン)」などの治療薬もある。それらが胆道がんにも有効かどうかの研究も、海外で進行中であり、日本でも治療開発が計画されている。

 「今年6月、一部のがんの遺伝子変異を調べる次世代シーケンサー(NGS)が保険適用されたことで、ゲノム医療に拍車がかかれば、近い将来、胆道がんの遺伝子変異を調べ、それに合った治療薬の研究が進むことは考えられます」

 一方、胆道がんの中でも、印刷業などの仕事で使用した薬剤が原因で発症した職業関連性胆道がんでは、がん細胞が免疫から逃れる仕組みに関連したPD-L1が高発現している。そのため、今年4月、国立がん研究センター東病院と大阪市立大学医学部附属病院で、免疫チェックポイント阻害剤による医師主導治験をスタートした。一般的な胆道がんには、免疫チェックポイント阻害剤の有効性は限定的であったが、職業関連性胆道がんには効果が期待できる可能性があるという。

 「いずれにしても、胆道がんでも新たな治療薬の開発は必要不可欠といえます」と池田医師。

 国をあげて研究を後押しし、加速させる仕組みが求められている。(安達純子)

 ■胆道がんの薬物療法 ゲムシタビン(商品名・ジェムザール)+シスプラチン(商品名・ブリプラチンなど)の併用療法が標準治療だったが、現在、ゲムシタビン+テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(商品名・TS-1)の併用療法、ゲムシタビン+TS-1+シスプラチンの併用療法も標準治療になっている。

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