未だ「治療薬の壁」厚い肝胆膵領域のがん 根治難しい肝がんに免疫チェックポイント阻害剤が効果

がん治療最前線

 がんゲノム医療の一部が保険適用されるなど、今年は「ゲノム元年」といわれる。だが、ゲノム解析が進んでも治療薬の開発がままならず、大きな壁が立ち塞がる種類のがんもある。その代表格が肝胆膵領域のがん。約20年前と比べればはるかに治療薬はよくなり、壁は少しずつ崩されてきた。しかし、まだその壁は厚い。最前線で治療や研究にあたる専門医に話を聞く。

                   

 国内のがん死因1位は肺がん、2位は大腸がんで、3位が胃がんだ。いずれも発症する人(罹患率)は、年間12万~14万人と多い。

 一方、発症する人は約2万~4万人だが死亡率の高いがんとなっているのが肝胆膵(肝臓・胆道・膵臓)領域。死因4位膵がん、5位肝がん、6位胆道がん(胆のう・胆管がん)と続き、進行がんに対する効果的な薬剤が限られていることが大きな壁となっている。

 「肝胆膵領域のがんは、約20年前には有効な薬剤が全くありませんでした。今世紀にようやく治療薬が登場してきたところで、まだ種類は限られています。この少ない薬剤をいかに有効に活用し、効果を上げるか、日々の診療に取り組んでいるところです」

 こう話すのは、国立がん研究センター東病院肝胆膵内科科長の池田公史医師。1990年代から肝胆膵領域の薬物療法の開発に携わり、日本を代表する臨床腫瘍医の一人である。

 たとえば肝がんにおいて、手術ができない状態や、がんを焼灼するラジオ波焼灼療法でも効果を得られない場合には、20世紀は薬による治療が難しかった。それを変えたのが、2009年に登場した分子標的薬「ソラフェニブ」。昨年新たに「レンバチニブ」が承認され、薬による治療法の新たな道が開かれた。

 「ソラフェニブで効果が得られない場合の二次治療薬として、2017年に『レゴラフェニブ』が承認されました。また、昨年、レンバチニブも承認されたことで、肝がんの薬物療法がようやく強固なものになりました」

 ただし、3つの薬剤だけでは、肝がんの予後は改善されるものの根治するのは難しい。さらに有効な新薬が必要な状態は続いている。肝がんでゲノム解析をして特徴的な遺伝子やその変異を見つけ、適する治療を行っても、良好な治療効果が得られていないのが実情だ。

 「肝臓は、消化吸収、解毒、代謝など、たくさんの役割を担っているため、一筋縄ではいかないのかもしれません。肝がんは多彩な顔を持つため、一つの薬剤ではなかなか抑えにくく、薬剤の開発が進みにくいと考えられるのです」

 それでも池田医師は、限られる薬剤で最大限の効果を引き出すべく、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の臨床試験に取り組むなど、新しい治療法の開発に尽力している。

 「肝がんには、免疫チェックポイント阻害剤も一定の効果が得られています。使用できる薬剤も少しずつ増え、併用療法の開発が進んできています。治療法というのは、何かをきっかけに大躍進して、それまでの状況を一変させることがあります。予後を改善する人を増やすために、今後も臨床研究を進めたいと思っています」と決意を新たにしている。(安達純子)

 ■肝がんの薬物療法 2009年に分子標的薬の「ソラフェニブ(商品名・ネクサバール)」が薬事承認され、ソラフェニブで効果が得られないときの二次治療として、17年に「レゴラフェニブ(商品名・スチバーガ)」が承認された。18年には、新たな分子標的薬として「レンバチニブ(商品名・レンビマ)」が承認され、レンビマと免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の臨床試験が進められている。

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