「アマニ油」母乳経由で乳幼児のアレルギーにも効果!?

【食と健康 ホントの話】

 近年、乳幼児の食物アレルギーが増加している。6歳前後で軽快することが多いが、その理由の1つは、腸管の免疫が成熟してきたため、と考えられている。しかし近年では、それ以降の年齢でも食物アレルギーが継続する場合が増えていて、社会問題化している。

 乳幼児の健康に最も影響を与えるものの1つは母乳。そのため心配した母親が、妊娠中や授乳中に特定の食物を除去し、子供の食物アレルギーを予防しようと考える場合がある。しかし最新の『食物アレルギー診療ガイドライン』では、そうした効果は否定されている上、母親の栄養が偏るため推奨していない。

 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純センター長らのグループは、母乳とアレルギーの関係に着目、母親がどんなものを食べると、その母乳で育った子供の腸内細菌やアレルギーの状態はどうなるのか、ということを、まずはアレルギー性皮膚炎のモデルマウスを使って実験した。

 國澤センター長はとくに、母子間での脂質の移行があるのではないかと考え、大豆油もしくはアマニ油で飼育したマウスを妊娠、出産させて、その母乳中の脂肪酸組成の違いを確認。さらに、アマニ油で飼育したマウスの母乳で育てた子供は、皮膚炎が有意に抑制された。

 このことから國澤センター長は、「母親が摂った食事由来の油は、母親の体質を決めているだけではなく、授乳期には母乳を介して子供のアレルギーにも関わっているのではないか、ということを確認しました」と語る。

 また、アマニ油やエゴマ油に多く含まれるαリノレン酸や、その変換型であるEPA、DHAといったオメガ3系脂肪酸を摂ると、体内の酵素によって「17、18-EpETE」という代謝物ができる。この代謝物の働きによってアレルギーを抑制する可能性が見えてきているが、実験したマウスの母乳中にも、この母乳で育った子供の血液の中にも、同代謝物が存在することを確認した。

 次に國澤センター長は、都内の病院小児科と共同でヒトの母乳を研究。ヒトの母乳の中にも「EpETE」があることを確認。また、出産した母親の母乳を0カ月、1カ月、3カ月と経時的に集めながら、その子供の腸内細菌の状態やアレルギーの情報を集めた。たとえば1歳時検診のときにアレルギーと診断された子供は、0カ月、1カ月、3カ月でどんな母乳で育ったのか、どんな腸内細菌を保持していたのか、という情報を収集したのだ。

 この研究で、1歳児検診でアレルギーと診断された子供の1年前、生まれた直後である0カ月のときの母親の母乳中で非常に少ない成分を同定することができた。それと相関して、1歳時検診のときにアレルギーと診断された子供の、生後1カ月のときの特定の腸内細菌が非常に少ない、ということも分かってきた。

 國澤センター長は、これらの研究から2つのことが期待できると話す。

 「アレルギーの発症が1年前から分かってきますので、1つは母乳が、子供のアレルギー発症を予測できる、診断マーカーになることが期待されますし、治療の標的にもなりうると考えます。もう1つは、不足した成分を補完できるようなミルクを作ったり、お母さんの食事を変えて母乳の中身を変えることによって、アレルギーを予防したり改善できたりするのではないか、という可能性を今考えているところです」(医療ジャーナリスト 石井悦子)

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