神戸「焼酎パフェ」に見た“地域ブランド”誕生のヒント

 八十八夜も過ぎ、初夏らしくなりました。どうやら今年の夏も酷暑になりそうです。

 そんな夏を見越すように、スイーツのまち神戸にはヒンヤリ美味しい「焼酎パフェ」が登場しました。甘いパフェに焼酎をかけるという珍しいスイーツですが、意外にも味は絶品。パフェにあしらわれたマンゴーと焼酎の相性も抜群で、絶妙な味のハーモニーにハマる人が続出しています。

 しかしなぜ、パフェに焼酎をかけるなんて、変わった発想が生まれたのでしょうか。「焼酎パフェ」をプロデュースした、神戸スイーツ発信拠点「リトル神戸」の三坂美代子さん(株式会社CUADRO代表取締役)に聞くと、「神戸市と宮崎県は連携協定を結んでいるので、私たちは、それぞれが誇る名産品や技術をコラボさせて新しいスイーツをつくっているのですよ」と教えてくれました。そういえば焼酎もマンゴーも宮崎が誇る名産品。それを神戸が誇るパティシエがスイーツにした結果、これまでにない「焼酎パフェ」が生まれたというワケです。

 実はこのストーリー、「焼酎パフェ」を大きな地域ブランドに育てる可能性を秘めています。誇りこそがブランドの種になるからです。

 たとえば、私の故郷・京都府宇治市が誇る宇治茶ブランドも、鎌倉時代に地域の誇りがコラボしたことから生まれました。

 当時、お茶といえば最初に植えられた京都「栂ノ尾(とがのお)高山寺」の茶だけが「本茶」であり、宇治茶は「非茶(茶にあらず)」とされていたにもかかわらず、地域の誇りが集まったことから日本一のブランドに変身したのです。

 キッカケは後嵯峨天皇が、宇治の誇りである平等院に茶の木をお手植えになったことでした。人々はそれをとても誇りに思い、とても大切に育てたそうです。

 茶摘みの時期を迎えたときも、「後嵯峨天皇が平等院にお手植えになった茶なのだから神聖な水で淹(い)れなければならない」と考え、古くから宇治の守り神とされている「宇治上神社」に湧く水で淹れました。つまり後嵯峨天皇と平等院、さらに宇治上神社の湧き水という地元の誇りがコラボした結果、「非茶」だった宇治茶は一躍、高貴なお茶のイメージをまとうようになったのです。

 良いイメージを持つモノには多くの人が注目します。高貴になった宇治茶にはまず室町幕府三代将軍・足利義満が注目し、みずから栽培を奨励しようと「宇治七名園」を整備しました。

 戦国時代になると織田信長や豊臣秀吉が、功成り名を遂げた証しのように“高貴な宇治茶”の栽培を奨励し、江戸時代には三代将軍・徳川家光が宇治茶を江戸城へ献上するよう命じました。このときすでに宇治茶は将軍様ご用達の日本一高貴なお茶という、揺るぎないブランドを確立していたのです。

 「焼酎パフェ」はまだ誕生したばかりですが、イメージのインパクトが強いだけに注目する人は多いでしょう。神戸と宮崎の新しい地域ブランドになる日が楽しみです。 (隔週水曜日掲載)

 ■殿村美樹(とのむら・みき) 株式会社TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「うどん県」や「ひこにゃん」など、地方PRを3000件以上成功させた“ブーム仕掛け人”。

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