海道東征コンサート大阪公演11月8日開催

 125回目の御代代わり(皇位継承)が行われた今年。11月8日には、初代神武天皇が日向・高千穂宮を旅立って大和・白檮原(かしはら)(橿原)宮で即位するまでの足跡を歌い上げる交声曲(カンタータ)「海道東征」公演が大阪で行われる。4月の東京公演に続いて8回目の今回は、126代目の新天皇誕生に伴う即位礼正殿の儀(10月22日)の後、大嘗祭(11月14、15日)の前という日程で、祝賀ムードあふれる公演になりそう。過去7公演すべてで舞台に立っているオペラ歌手、幸田浩子さんが、神武天皇を祭る橿原神宮に正式参拝し、歌手の視点から「海道東征」の魅力を語った。(安本寿久)

 ■オペラ歌手・幸田浩子さん橿原神宮に正式参拝

 幸田さんは、同神宮の南神門で手水を使って身を清め、神職の先導で玉砂利と回廊を進んで、内拝殿で参拝した。同神宮からは畝傍(うねび)山が隣接するように望め、同山の東南に最初の皇居を営んで「日本のはじまり」の地にした天皇の緊張感や高揚感がうかがえる。

 「海道東征」は、高千穂で政務を執る神武天皇がまだ見ぬ大和を思慕し(第2章)、御船出(第3章)するという、記紀が書く神武東征を北原白秋の詩で再現している。白秋が専ら用いたのは大和言葉。この美しく奥行きのある詩をソリストたちや合唱団が、叙情豊かに歌い上げる。

 ■共鳴する歌声

 「格調高い大和言葉ですが、歌いやすいんです。高千穂を発(た)ってからの瀬戸内の島々や船から見える山々の美しさ、そしてそこで暮らす人々の姿が目に浮かぶような詩ですから」そう話す幸田さんが最も好きな詩は、第2章の「大和思慕」にあるこの部分だという。

 〈大和はも聽(きき)美(うるは)し その雲(くも)居(ゐ)思(おもひ)遥(はる)けし 美しの大和や 美しの大和や〉

 「自分の大切な故郷の山々が見えるように歌います。カンタータですから音楽の固まりに参加しているような心持ちも大好きです。歌声が共鳴し合う音楽の中にいる、作品の中にいるっていう気持ちになります。自分が全体に溶け込んでいるような心地です」

 ■海への愛着

 山田耕筰と並ぶ日本洋楽の父と言われる信時(のぶとき)潔の曲にも、大和言葉のような日本らしさを感じるという。

 「曲の始まりはフルートなのに、日本の音楽のように聞こえる構成。わらべ歌のような曲調も、賛美歌のような曲調も取り入れられていますが、私は全体的に海への愛着を感じます。時には荒々しく雄々しい海を表現しても、清らかに流れる水と共に生きる民、それが日本人の心だと訴えているように感じます」

 幸田さんは「海道東征」を歌うようになって、神話の里・高千穂を旅し、白秋の郷里の柳川も訪れた。旅程はできるだけ瀬戸内の船旅を選び、柳川では川下りも経験した。その経験から感じたことは、水を愛する白秋の心だという。

 「海道東征でも、荒れている海は詩になっていますが、やがて穏やかになる。曲も含めて『言(こと)向(む)け和(やわ)せ』という慈愛の心に満ちた作品だと思います」

 言向け和せとは、言葉に振り向くという意味で、主に説得で国造りした古代天皇たちの歴史を示唆している。126代目の天皇が誕生した今年、「海道東征」で日本の本来の姿を見つめてみたい。

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 ■大阪公演概要

 【日  時】令和元年11月8日(金)午後6時30分開演

 【会  場】ザ・シンフォニーホール(大阪市北区)

 【演  奏】福島章恭指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー合唱団、大阪すみよし少年少女合唱団

 【ソリスト】幸田浩子(ソプラノ)、清野友香莉(ソプラノ)、石井藍(アルト)、小原啓楼(テノール)、原田圭(バリトン)

 【曲  目】シューベルト交響曲第7番「未完成」、交声曲「海道東征」

 【主  催】産経新聞社

 【共  催】大阪フィルハーモニー協会

 【協  賛】滋慶学園グループほか

 【料  金】S席=8000円、A席=7000円、ユースチケット(25歳以下)=4500円(税込み)発売中

【チケット】ザ・シンフォニーチケットセンター(06・6453・2333)▽大阪フィル・チケットセンター(06・6656・4890)▽チケットぴあ(0570・02・9999)▽ローソンチケット(0570・084・005)

【ホームページ】「イベントスクランブル」で検索

https://www.eventscramble.jp/e/kaido_tosei/

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 ■海道東征

 詩人の北原白秋(1885~1942年)が作詩し、信時潔(1887~1965年)が作曲した器楽伴奏付きの声楽曲。神武天皇の即位を初年とする皇紀で2600年にあたった昭和15(1940)年、奉祝曲としてつくられた。

 高千穂▽大和思慕▽御船出(みふなで)▽御(み)船謡(ふなうた)▽速吸(はやすい)と●(=くさかんむりに兎)(う)狹(さ)▽海道回顧▽白肩の津上陸▽天業恢弘(かいこう)-の全8章で、高千穂宮を出て東征を成し遂げた神武天皇の足跡を再現している。信時の曲は、雅楽や日本の古謡の要素も取り入れ、白秋の詩にさらに、日本らしさを加えている。神武東征は古事記では16年かかったと書かれている。

 ■橿原神宮

 東征を終えた神武天皇が最初の皇居、白檮原宮を造営した畝傍山の東南に明治23(1890)年、建立された。造営にあたって元京都御所の賢(かしこ)所(どころ)が本殿として、神嘉殿(しんかでん)が拝殿として下賜された。

 ご祭神は神武天皇と皇后の媛蹈鞴(ひめたたら)五十(い)鈴媛(すずひめ)(古事記ではイスケヨリヒメ)。神武天皇は、高千穂に降臨したニニギノミコトの3代後の子孫でニニギの祖母の天照大御神から数えると、5代後の直系になる。即位前の名はカムヤマトイハレビコ。橿原神宮だけでなく宮崎神宮にも祭られている。

 ■こうだ・ひろこ 東京芸術大学首席卒業。数々の国際コンクールで上位入賞後、欧州の名門歌劇場に主要な役で出演。ウィーン・フォルクスオーパーの専属を経て、現在は国内外で幅広く活躍中。平成30年、CDデビュー10周年記念「ARIA 花から花へ~オペラ・アリア名曲集」をリリース。二期会会員。

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