受動喫煙防止強化 悪質な違反者には30万円以下の過料も 屋内禁煙は一部緩和

 悪質な違反には過料30万円も--。厚生労働省は東京五輪・パラリンピックに向け、非喫煙者がたばこの煙を吸い込む受動喫煙の防止策を強化した健康増進法改正案原案を1日公開した。調査会社は外食産業へのマイナス影響を試算しているが、別の見方もあるようだ。

 原案は昨年10月公表のたたき台をもとに、病院や小学校などを敷地内禁煙、官公庁や大学を建物内禁煙とした。飲食店などのサービス業の施設は基本的に建物内禁煙だが喫煙室の設置が認められる。小規模のバーやスナックなどは、未成年や妊婦の利用が想定しにくいため例外とされる方針。

 厚労省は、違反した喫煙者に喫煙の中止や退出を指導し、その後命令に従わなかった場合に30万円以下の過料に処すると明記した。違反した施設側は過料50万円以下。またシガーバーなどの喫煙のための店や、たばこの研究開発施設を喫煙可能とし、体育館などの運動施設では喫煙室設置不可の屋内禁煙だがプロ野球のスタジアムでは喫煙室設置を認めるといった、たたき台から後退した部分もある。

 市場調査会社の富士経済は、たたき台段階の受動喫煙防止法の施行で喫煙者の飲食店利用が落ち込むと予測し、市場規模約21兆円の外食市場のうち約13兆円を占める「居酒屋、バー・スナック」、「カフェ・喫茶」、「レストラン」の3業態で計8401億円のマイナス影響が出ると試算した。内訳では「居酒屋、バー・スナック」が6554億円減と最も大きい。居酒屋などでは喫煙者の割合が53.8%と高いが、資金面と店舗スペースから喫煙室の設置が難しいのが理由だという。

 一方、2010年に愛知県が実施した調査では敷地内禁煙にした飲食店の96%、建物内禁煙にした飲食店の94%が来客数の変化について「変わらない」と回答しており、禁煙化が店に及ぼす影響は小さいという結果になっている。同年の大阪府の調査によると終日全面禁煙実施後に売り上げが「減った」飲食店は8.4%。

 最近では、九州看護福祉大の川俣幹雄教授らの研究グループが約1万人にアンケート調査を実施し、料理や接客が優れた店が禁煙になったら「使用回数が増える」と回答した人が4230人に上り、「減る」と答えた1272人を大きく上回ったと今月発表した。米国と英国においても禁煙規制後にバーやパブの利用が増えたというデータがある。

 厚労省はこうしたデータを踏まえたうえで、非喫煙者が受動喫煙しないための対策強化の必要性を強調している。

 日本医師会などは全ての建物で喫煙室設置を認めない屋内完全禁煙を主張しているが、たばこと外食産業の業界団体は喫煙者と非喫煙者を時間や場所で分ける「分煙」の推進を求めている。受動喫煙対策をめぐる団体間の見解のへだたりは大きい。

 政界でも塩崎恭久厚労相が受動喫煙対策の強化に強い決意を示す一方で、麻生太郎副総理兼財務相がたばこの税収について「(年間)2兆1400億がゼロになると多大な影響が出ることははっきりしている」と発言し、民進党の有志議員らが「完全禁煙・分煙・全面喫煙可」を飲食店側が選択できる独自法案の提出を目指す動きを見せている。自民党の「たばこ議員連盟」(野田毅会長)も同様の対案をまとめており、法案の提出に向けては調整が難航することも予想される。

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