【デキる人の健康学】飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の功罪 摂取量に関して再検討が必要

 今年6月、米食品医薬品局(FDA)は一部の菓子類やマーガリンなどに含まれ心臓疾患のリスクを高めるとされる「トランス脂肪酸」の原因となる油の使用を禁じると発表した。

 「食用として一般的に安全とは認められない」と判断。3年間の猶予期間を経て、2018年6月以降は食品への添加を原則認めない方針だ。

 トランス脂肪酸は液体の植物油などを固める加工過程などで生成され、マーガリンやパン、ケーキ、クッキー、ドーナツなどの洋菓子や揚げ物に含まれている。

 世界保健機関(WHO)はトランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう目標値を設定している。一方、日本では食品安全委員会が2012年の評価書で、日本人の大多数はWHOの目標を下回っているとしてトランス脂肪酸の表示を義務付けていない。

 カナダ・マクマスター大学の臨床疫学のソニア・アナンド博士らの研究チームはこれまでに発表された飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸と心疾患、糖尿病、脳卒中の死亡率に関する過去の論文を包括的にレビューしその結果を最近報告している。アナンド博士らの分析によれば、飽和脂肪酸の摂取量が多いと冠状動脈による死亡リスクを15%高めたが、飽和脂肪酸は総死亡リスク、脳卒中および糖尿病による死亡リスクには影響を与えないことが分かった。

 一方、トランス脂肪酸の摂取量が多いと総死亡リスクが34%、冠状動脈疾患の死亡リスクが28%、冠状動脈の発症リスクが21%高くなることが分かった。現在の米国のガイドラインでは飽和脂肪酸はエネルギー比率で10%未満、トランス脂肪酸は1%未満にするように推奨されているので、摂取量に関して再検討が必要だろう。最近では、ココナッツオイルなどの飽和脂肪酸の健康効果が報告されているので質の見直も重要だ。

白澤卓二

しらさわ・たくじ 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。

注目まとめ

    アクセスランキング

    もっと見る

    ピックアップ

      どう思う?

      「どう思う?」一覧