進まぬ回収、苦悩の自治体 生活保護費の不正受給金返還:イザ!

2014.1.6 17:03

進まぬ回収、苦悩の自治体 生活保護費の不正受給金返還

 生活保護の不正受給者に費用を返還させる手続きをめぐり、大阪府八尾市が現行制度では認められない保護費からの天引き徴収を行っていたことが発覚した。年々増加する不正受給は制度不信を招く最大の問題だが、回収は思うように進んでおらず、どの自治体も八尾市のような強引な手法に走りかねない現状がある。

 厚生労働省によると、全国の不正受給額は単年度で約173億円(平成23年度)だったのに対し、返還金は約45億円にとどまっている。毎月の保護費から千円単位でやりくりするケースが目立ち、完済までに数十年を要するような返済プランも珍しくない。

 受給者数が全国の自治体で最多の大阪市でも、不正受給者の約8割が月々の保護費を返還原資にしているという。市関係者は「『手元に金がない』と返還を拒まれれば打つ手がない」と回収率を上げる難しさを打ち明けた。

 そもそも不正に受け取った保護費が税金なら、返済に回す保護費も税金だ。いわゆる身銭を切る感覚とは違っており、「不正受給にペナルティーなし」と批判が根強い。自治体に厳しい対応が求められているのは間違いない。

 ただ、無理な徴収で受給者の暮らしが苦しくなれば「最低限度の生活保障」という制度の趣旨を損なうことになる。あくまで保護費を全額支給した上で、受給者から自発的に返還してもらう形が大原則だ。

 今年7月に施行される改正生活保護法では、自治体が月々の保護費から返還金を天引きできるよう制度が改正されたが、これも受給者本人の事前申告が前提となっている。

 生活保護問題に詳しい関西国際大の道中隆教授(社会保障論)は「財政の厳しい自治体は、返還金の徴収に躍起になりがちだ」と指摘しつつ、八尾市の天引き徴収については「職員が勝手に(受給者から預かった印鑑で)押印するなど言語道断。生活保護行政への信頼を損ねることにしかならない」と批判した。

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