「揺さぶり」は「虐待」か 神奈川の乳児死亡、傷害罪で父親起訴

 崩れた“方程式”

 この事件では有罪判決が下されたが、「SBSイコール虐待」というこれまで崩れることの少なかった“方程式”が「絶対的なものではない」との警鐘を鳴らした形だ。同プロジェクトは、スウェーデンで26年に最高裁がSBSの科学的根拠が不十分として無罪判決を言い渡したほか、米国でも虐待事件での無罪判決が相次いでいると指摘する。

 また、同地裁では昨年11月、大阪府吹田市の自宅で生後約1カ月半の次男を揺さぶって死亡させたとして、傷害致死罪に問われた父親に無罪判決を言い渡している。「揺さぶりで負傷したと言うには疑いが残る」との判決理由だった。

 一方、千葉県野田市では小学4年で10歳だった栗原心愛(みあ)さんが父親から恒常的な虐待を受けて死亡する事件が発生。東京都目黒区でも昨年3月、5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが両親による虐待の末に死亡。子供が犠牲となる事件が後を絶たない。

 児童相談所の対応のまずさが指摘されることも多く、「救える命」を救えていないケースがあることも事実だ。虐待の大半は家庭という「密室」で起こる。立件のハードルは自然と上がるが、社会が救えなかった命に報いられるかは捜査当局の努力に委ねられる。

 捜査関係者は「SBSが虐待とイコールではないことは承知している」とした上で「消極的になってはいけない。少しでも疑いがあれば捜査する。親の都合で子供が犠牲になることは許せない」と話した。

 【乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)】

 乳幼児が強く揺さぶられて脳が損傷することによって起こる諸症状。未発達で軟らかい脳が頭蓋骨に何度も打ち付けられて傷つき、重症になると嘔吐(おうと)やけいれん、意識障害を起こす。頭蓋内出血で知的障害やけいれん発作といった後遺症が出たり、死亡したりすることもある。頭部の表面に目立った外傷がなくても、内部に(1)硬膜下血腫(2)脳浮腫(3)網膜出血-の3つの症状(3徴候)があれば「激しく揺さぶられるなどの暴行を受けた可能性がある」とされ、虐待の有無を見極める重要な基準の一つとなっている。

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