命奪うのは放射線ではない!10万人検査の医師が報告した真のリスクとは…

 23年9月から24年3月までのおよそ半年間では、被験者の35%で放射性セシウムが検出されたが、翌年の夏は10%以下、26年以降は5%以下で推移している。

 26年から県内3カ所で導入したベビースキャンは通常のWBCの5~6倍の検出能力を持つ。これまでに4千人以上を検査したが、放射性セシウムが検出された児童は1人もいない。

 にもかかわらず、検査と同時に実施したアンケートでは、福島県産の野菜やコメ、水道水を避ける親の割合が約6割に上った。「通常の食生活で内部被曝することはない」。坪倉さんは“安全性”を発信する必要性を感じ、これまでに県内の小学校などで100回以上の講演を重ねてきた。

 原発事故は福島の社会を大きく変化させた。避難で長時間の移動に耐えられず亡くなった高齢者、身体の異変を感じても受診せず末期がんになった女性、脳卒中でたびたび入院する除染作業員…。住民は健康を害し、「弱者」があぶり出された。坪倉さんはこうした実態を目の当たりにしてきた。

 データも坪倉さんの見てきた現実を裏付ける。原発事故後、南相馬市立総合病院では脳卒中で入院する患者が倍増した。糖尿病や高脂血症などの生活習慣病が事故後に増加していたことも分かり、避難した人の方が避難しなかった人よりも病気の悪化率が大きいという結果も出ている。

 「住民の命を奪っているのは放射線ではない。放射線をリスクの1つとしてとらえながら、本当に命を守りたければ、社会全体の問題として本気で取り組んでいかないといけない」。坪倉さんはそう訴えた。

 原発事故から5年近くがたつが、放射線への不安はなかなか消えない。被曝リスクの実態はどこまで分かっているのか報告する。

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