「子供たち殺す気か」回復しない福島の来県者…原発事故前の半分に満たず

 【福島 風評との戦い】(上)

 校舎の壁の時計は、全て3時38分を指したまま止まっていた。

 東京電力福島第1原発事故で全町避難が続く福島県浪江町の請戸(うけど)小学校。東日本大震災の発生から約1時間後、海岸から約500メートルにあるこの学校を大津波が襲った。児童77人は既に約2キロ先の避難場所に逃げて無事だったが、間もなく原発事故の影響で散り散りになった。

 学校の周囲は今、ほぼ野原のようになっている。除染廃棄物の詰まった黒い袋が山積みになっている光景ばかりが目立つ。

 「この袋は毎日どんどん積み上がっていく。朝起きてこの光景を見ると、地元の人たちは鬱屈した気持ちになる。福島の本当の姿をネット情報などで判断せず、どうかご自分の目でじかに見て判断してください」

 福島県南相馬市で平成27年3月まで高校教師をしていた大貫昭子さん(60)。埼玉県から訪れたという女性に、柔和な表情でそう語りかけた。大貫さんは退職後、自家用車を使ってボランティアでガイドに携わっている。

 災害や戦争などの苦しみや悲しみを分かち合いたい-。こうした思いをかなえるための手段として「ダークツーリズム」という考え方に注目が集まっている。

 この日は、原発事故で被曝した牛約330頭を飼っている牧場など、許可証がないと入れない場所を中心に、約3時間かけて回った。道中、大貫さんは除染作業員や、放射線が高い区域の前で警備をしている人を見てこうつぶやいた。

 「私の学校の卒業生もいっぱい働いている。でも実際にここに帰ってくる人は年寄りばかり。未来に希望は見えてこない」

 大貫さんが所属しているNPO法人「野馬土(のまど)」は、被災地を訪れる人へのガイドをすすんで引き受けている。ガイドは常時4人で、臨時を含めると約10人。大貫さんのような元教師のほか、農家、医療関係者もいる。昨年だけで約2千人を案内したという。

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