躍進するフィリピン映画 脚本に2年半、7回書き直した“渾身作”も 『愛について書く』『メタモルフォシス』

 【アジアの潮流 ハリウッド超えに挑む】

 今年2月、世界の映画界に激震が走った。有力候補といわれた『ジョーカー』や『アイリッシュマン』などハリウッド大作を押しのけ、韓国のポン・ジュノ監督の『パラサイト』が作品賞、監督賞を受賞したのだ。アジア映画では同賞史上初の快挙だ。近年、韓国を始め、ハリウッドを脅かす力作がアジア各国から生まれている。『パラサイト』に続く注目のアジアの新作を5回連載で紹介したい。

 第1回は一昨年、映画生誕100年を迎えたフィリピンの最新作を2本。アジア数十カ国から秀作が集う大阪アジアン映画祭(3月開催)で近年、コンペ部門をにぎわす常連国となるなどフィリピン映画の成長は著しい。

 今年の同映画祭で特別賞を受賞した『愛について書く』は新鋭クリッサント・アキーノ監督のデビュー作だ。ロマンチック・コメディー映画の脚本を任された新人女性脚本家が主人公。コメディーだが仕事に情熱を注ぐ脚本家の生き方を感動的に描く。

 「脚本に2年半費やし、7回書き直しました」とアキーノ監督。約14年の下積みから監督デビューした苦労人。主人公がプロデューサーから何度も書き直しを命じられるシーンは「実際に私が受けた試練」とも。

 話題作がもう1本。『メタモルフォシス』は注目の新進監督、ホセ・エンリーケ・ティグラオの長編デビュー作。15歳の少年アダムには本人も知らない秘密があった。突然、医師から「あなたには男性、女性2つの性器がある」と診断される衝撃的な物語。実話を基に製作したホセ監督は「映画は少数派の人のために作られるべきだ」と強調。あえて難しいテーマに挑んだため、脚本に4年かかったという。

 “試練を切り開く人間賛歌”が2作には貫かれている。また、両作ともフィリピンの美しい大自然の中でロケを敢行。ストーリーの魅力もさることながら、コロナ禍の後に観光ブームも起きそうだ。(波多野康雅)

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