さいとう・たかをの本格的SF劇画! 21世紀後半の宇宙飛行を描く「サイレントワールド」

【マンガ探偵局がゆく】

 今回の調査はSF映画好きな方からの調査依頼である。

 「『スター・ウォーズ』シリーズの最新作を楽しみにしている者です。『スター・ウォーズ』の第1作が上映されたのは中学生のとき。映画を見てから、すっかり宇宙ものSFのファンになったわたしは、SF小説やコミックスを読みあさってました。その中に『ゴルゴ13』のさいとう・たかをさんの宇宙SFで、かなり本格的なものがあった記憶があります。また読み返したいので、このマンガを探してください」 (会社員・54歳)

 現在は「エピソード4」になっているジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ」第1作が日本で封切られたのは1978年の夏。一足早く公開されていたスピルバーグ監督の「未知との遭遇」とともに日本中に空前のSFブームを巻き起こした。

 ただし、調査の結果、依頼人が探しているマンガはそれよりも古い作品ということがわかった。63年にさいとう・プロから出た貸本向け単行本「ベリー・ファーザー」または、これをリメークして66年に「週刊少年マガジン」で連載された「サイレントワールド」のいずれかだ。

 どちらも舞台は21世紀後半。月の基地で宇宙飛行士になるための訓練を受けていた6人の少年少女が、宇宙船・フジ1号のテスト飛行に紛れ込み、未知の宇宙に飛ばされてしまう。船を動かしていた東郷教官をはじめとした大人たちは宇宙線を浴びて死亡。残された少年少女が東郷の残したメッセージ「友情・希望・勇気」を胸に刻みながら宇宙を旅し、宇宙人との出会いなどを経験しながら成長していくというストーリーだ。

 ちなみに、教官の東郷はゴルゴ13のデューク東郷と同じく、さいとう・たかをの中学時代の恩師の名前を拝借している。

 フジ1号が宇宙線をエネルギー源にして飛行し、宇宙線を使いすぎたために空間に歪みができて、未知の宇宙に飛ばされたという設定が斬新だ。宇宙人とのコンタクトの描写もそれまでの少年マンガにはないリアルさがある。

 さいとう劇画の中では、行き過ぎた科学文明の危機を描いた「デビルキング」(64年)とともにSFファンから今でも高く評価されている作品である。

 「サイレントワールド」の単行本はかつて秋田書店から新書判が出ていたので、依頼人はそれを読んだのでは? 長く重版されていたため、古書でも比較的入手しやすい。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。京都精華大学マンガ学部客員教授。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

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