『繕い裁つ人』三島有紀子監督の“こだわり”と“哲学”:イザ!

2015.2.7 11:27

『繕い裁つ人』三島有紀子監督の“こだわり”と“哲学”

 「脚本はただの設計図でしかなく、実際にその空間に立ったときに自然に動けるかどうかを自分がやってみて決めます。今回も、光の入り方がすごくきれいな日だったので、アイロンをかけて蒸気がばーっと出たら主人公の市江さんのそのときの気持ちが表現できるんじゃないかと思って、そういう芝居に変えたことがある。突然言われてみんなであわてる、という光景が毎朝、行われていました。でも市江役の中谷さんは、この作品がどこに向かっていけばいいかを一緒になって考えてくれる人だったので、2人でゴールを迎えられたなという感じです」

 その向かう先とはどこだったのか。「言葉で語るものではないのですが」と言いながらひねり出してくれたのは、失われつつある本当に大切なものに関する監督なりの哲学だった。

 「同じような服がどこでも手に入る時代、市江さんの服はここでしか手に入らない、その人のためだけに作られた服なんです。でも時間とコストがかかるものはどんどん失われていっている。そういう世界って美しいかというと、決してそうではない。それがきちんと残る世の中というのが美しいんじゃないか、というのが私の哲学なんです」

 今後は「それでも生きていく」をテーマにしたいと思っている。その第1弾として、2月28日公開の短編集「破れたハートを売り物に」の1編「オヤジファイト」を監督した。普通のサラリーマンが妻と子に逃げられた後、どう生きていくかといった話で、「どんな状況であってもそれでも生きていく、ということが美しいと信じたい」ともう一つの哲学を語ってくれた。(藤井克郎)