“朝ドラロス”地域、どう乗り越えるか 鍵は「ドラマへの執着」を捨て“新しい名前をつける”こと

【売れないモノを売る極意】

 テレビ離れが叫ばれている昨今ですが、NHKの朝ドラは別格のようです。特に最近3~4年の人気は安定していて、2015年下半期の「あさが来た」から今年上半期「なつぞら」までの8作品はいずれも平均視聴率20%(ビデオリサーチ、関東地区調べ)を超えています。10%台ならヒットとされる現状では国民的な人気ドラマといえるでしょう。

 それだけに朝ドラの舞台になった地域は大変です。突然観光客が押し寄せるので経験したことのない賑わいと経済効果に酔いしれてしまいます。しかしドラマが終わった後には耐えがたい哀愁が待っています。いきなり観光客が来なくなり、地域は“ドラマ前”より暗く沈んでしまうのです。こうなったら私が得意とする「売れなくなった地域を売る方法」を使うしかありません。

 というワケで、私は朝ドラの嵐が去った“朝ドラロス”の地域に呼ばれることが多く、これまでも哀愁漂う町の活性化に取り組んできました。先日も9月に終わった「なつぞら」の舞台・北海道の十勝帯広地域からお呼びがかかり、さっそく帯広の玄関口「とかち帯広空港」に降り立ちました。すると空港はいまだに「なつぞら」一色。ヒロイン広瀬すずさんのポスターや「ようこそ!なつぞらの舞台へ」と書かれた横断幕があちこちに貼られ、お土産コーナーには「なつぞら」スイーツが平積みされていました。

 そんな空港の様子から、地元の落ち込みも激しいのかと思いきや、そこはさすがに北海道。もともと人気の観光地ですから、他の地域ほど打撃を受けている様子はありませんでした。むしろ「なつぞら」で得た注目をプラスに生かそうとする機運に満ちていて「殿村の意見“も”聞いてみよう」ということになったようです。

 私が提唱する「終わったドラマを生かすポイント」は2つだけ。「ドラマへの執着を捨てること」と「新しい名前をつけること」に尽きます。なぜなら時とともに忘れられるのはドラマであって、地域ではないからです。そこを勘違いして、いつまでも「ドラマの舞台」を名乗っていると、ドラマとともに心中することになりかねません。早くドラマのことは忘れて、新しく再出発することが大切なのです。

 たとえば、ひと昔前に人気を博したドラマ「北の国から」の舞台・富良野は今、ラベンダー畑の名所として有名です。実際のドラマでは豪雪シーンが頻繁に登場しましたが、ドラマ後は感動的な1シーンを彩ったラベンダー畑が新たな観光地になりました。これは地元の人々が、観光に適したラベンダー畑に「北の国からの舞台」ではなく「富良野のラベンダー畑」の看板をつけて売り出したからでしょう。さすがです。

 つまり、地域にとって人気ドラマは“結ばれない恋人”のようなもの。別れた後は、早く未練を断ち切らないと泥沼に沈んでしまいます。

 ただ蜜月の時にもらったプレゼントは名前を変えて大切にしましょう。良い思い出になるだけでなく、いずれ地域の歴史に変わりますから。

 ■殿村美樹(とのむら・みき) 株式会社TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「うどん県」や「ひこにゃん」など、地方PRを3000件以上成功させた“ブーム仕掛け人”。

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