生保で相次ぐ「健康増進」 データビジネスへの布石も 背景に 市場縮小への危機感 不健康な人の排除の懸念

 健康診断や運動を促し顧客に健康になってもらう「健康増進型」の分野に大手生命保険会社が出そろう。病気を未然に防いで保険金支払いや社会保障費を抑制する狙い。顧客の生活習慣などを子細に集め、ビッグデータビジネスへの布石とする。一方、健康な人を優遇する仕組みは、不健康な人の排除につながりかねないという懸念もある。

 明治安田生命は来年4月、健康状態に応じ保険料の一部をキャッシュバックする新商品を発売し、健康増進型保険の分野に新たに参入する。生保業界全体で健康をテーマとする商品やサービスが相次いでいる。

 大手では、第一生命保険が健診結果を提出すると保険料が割り引かれる商品を、住友生命保険はジムに通うなど健康への取り組み次第で保険料が上下する商品を販売中だ。日本生命保険も健康への取り組みでマイルが付与されるサービスを提供している。

 生保がこぞって健康増進型保険に乗り出すのには現在直面する国内の超低金利環境と、少子高齢社会の進行による将来的な市場縮小への危機感が背景にある。各社は、保険金を受け取る可能性が低い健康な加入者、優良顧客を他社よりも多く囲い込みたい考えだ。

 顧客の情報を集めるツールとして優れているという面もある。大量の個人情報をビッグデータとして分析し、1日の歩数や運動習慣と病気の発症率との相関性が判明すれば、保険の引き受けや査定を今よりも高度化できる。

 ビッグデータをビジネスに活用する動きは出始めている。T&Dホールディングス傘下の太陽生命保険は、東京都健康長寿医療センターに全国の高齢者約5万人分の「歩く速さ」のデータを提供。認知症リスク診断の指標づくりの共同研究を始めた。認知症予防の新サービスなどにつなげる狙いだ。

 ただ、健康増進型保険が行き過ぎると、健康不安を抱える人が生命保険に加入しにくくなる可能性がある。病気になるリスクが低い健康な人の保険料がどんどん割り引かれる一方、不健康な人や不摂生な、実際に保険に入って備える必要がある人ほど割高になる傾向が強まるからだ。

 生保関係者からは「『相互扶助』の精神に反し、生命保険が『健康な人のサークル』に変わってしまうかもしれない」との声も聞かれる。大手生保のそろい踏みを機に、健康増進型保険をめぐる議論は活発になりそうだ。

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