高齢者による運転事故を防止する人間工学 ペダルのオフセット(位置調整)問題を解決

 まずは膝の曲げ伸ばしや足の捻(ひね)りを制限するサポーターを付けられ、厚底で足が上げにくく、さらに足の裏の水平が保てなくなるオーバーシューズを履かされ、背中が丸まるように身体の前にウエイトを詰め込まれたベストを着せられて、なおかつ視野を遮(さえぎ)るメガネを掛けさせられた。

 歩けないわけではないが、スタスタとはいかない。座った状態から立ち上がるには杖があった方が助かるし、段差でもあれば転びかねない。階段の登り降りは相当怖いだろう。筆者もあと20年経たずに、リアルにこういう状態になるわけだ。

 さて、この状態で運転をする。と言ってもクローズドコースで、かつ安全のためクルマは実走させない。ついでに言えば、試験車両は旧型アクセラだ。旧型アクセラはフォード傘下時代のマツダで作られたクルマで、左ハンドル優先の設計のせいで、ペダルのオフセットが現行モデルとは比較にならないくらい大きい。

 足の曲げ伸ばしが不自由なので乗り降りも大変だが、何とか運転席に収まった。インストラクター役のエンジニアが言う。「それではそのままバックするつもりで身体を捻って後方を目視しながらブレーキペダルとアクセルペダルを踏み換えて下さい」。

 そう言われてブレーキを踏んだまま身体を捻ると、ブレーキペダルから足が浮きそうになる。それを太ももの筋力で調整しながら、言われた通りペダルを踏み換える。まだリアルな老人ではないから脚の力で補正できるが、なるほどこれは大変だ。うっかりクルマが動き出したときに慌ててブレーキを踏み直そうとしてアクセルと踏み間違えれば、暴走による死亡事故が起きるのも道理である。

 「次は新型のアクセラで試して下さい」と言われ、まったく同じ装備のままオフセットのない新型アクセラで試すと、身体を捻ってもブレーキペダルが安定して踏める。踏み替えの労力もずいぶんと軽減されている。「ものすごい差でしょう?」と言いたげなマツダの人たちのどや顔はともかく、正直なところ、高齢者にとって思った以上にその差は大きいと言うことが分かった。

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