拡大続く「電子書籍」市場 業界全体で取り組み本格化:イザ!

2014.12.29 08:00

拡大続く「電子書籍」市場 業界全体で取り組み本格化

 今年も電子書籍市場の拡大が続き、平成26年度は初の1千億円超(矢野経済研究所調べ)が見込まれる。「普及が進まない」といわれる電子書籍だが、出版社や書店では従来の枠組みを超えたサービスも広がり、本腰を入れてデジタルへの対応を始めた年になった。(戸谷真美)

 ■漫画が牽引役

 電子書籍市場の8割を占める漫画では、今年は主にスマートフォン、タブレット端末向けの無料漫画アプリが大きく利用者を伸ばした。DeNAが提供する「マンガボックス」は500万ダウンロード(DL)を突破。漫画誌に代わる新たな読者との接点として機能し始めた。同様の無料アプリ「comico(コミコ)」で人気を集めた連載『ReLIFE(リライフ)』は紙の本で単行本化され、累計40万部超のヒットに。紙の書籍とともに展開し、広告のない無料アプリで収益を上げた事例だ。

 出版社も3月にKADOKAWAが無料の「コミックウォーカー」を、9月には集英社が「少年ジャンプ+(プラス)」をリリース。「少年ジャンプ+」は3カ月で250万DLを超え、本誌のデジタル版が発売日に配信される有料サービスも好調という。電子書籍に詳しいフリーライターの鷹野凌さんは「出版社にとって電子版は、一定のラインより売れればあとは原価が低い分、収益力の高いビジネス。それが実証されてきた」とみている。

 また漫画アプリは、英語版や中国語版もあり、海外展開の足がかりとしても期待されている。電子書籍にも出版社の出版権を認める改正著作権法が4月に成立し、海賊版への対策も整いつつある。

 ■雑誌とセット

 今年は紙の雑誌に電子版をセットして配信する動きも目立った。「持ち運びに困る」「記事を保管しにくい」という紙の雑誌の弱点を補い、電子版の普及と同時に低迷する雑誌市場の活性化も狙う。

 「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は今月、電子書店「BookLive!(ブックライブ)」と共同で、店頭で紙の雑誌を購入すると同じ雑誌の電子版も無料で入手できるサービス「Airbook(エアブック)」を始めた。中西一雄TSUTAYA副社長は「エアブックに同調してくれる書店や出版社などを増やしたい」と、サービス拡大を目指す意向。

 同様のサービスは、文教堂や丸善など全国約1500の書店が参加する「空飛ぶ本棚」、三省堂書店の「デジ本プラス」でも行われ、ファッション誌や情報誌を中心に対象雑誌は増えつつある。

 ■図書館に注目

 電子書籍市場が右肩上がりの成長を続ける一方、公共図書館の電子サービス導入は進まず、全国で約30館、全体の1%程度にとどまっている。

 ただ、今年は国立国会図書館が、絶版などで入手困難な書籍をデジタル化し、全国の公共図書館への提供を開始。また28年4月に施行される障害者差別解消法により、公共図書館にも障害者への「合理的配慮」が義務づけられることになる。視覚障害を持つ人にとって、文字の拡大や白黒反転、音声読み上げ機能を持つ電子書籍の導入は明るいニュースになるだろう。鷹野さんは「電子図書館には課題も多いが、取り組みも活発で来年以降も注目される。公共図書館の電子サービスが充実すれば、電子書籍に触れる人は格段に増えるはず」と期待を込めた。