【主張】川辺川ダム容認 真摯な反省から始めたい

 熊本県の蒲島郁夫知事が球磨川流域の治水対策として、最大支流の川辺川でダムを建設することを容認した。

 蒲島氏は12年前にダム計画の白紙撤回を打ち出し、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権が翌年、建設を中止した。代替の治水対策が十分講じられないまま、今年7月の九州豪雨で球磨川が氾濫し、多数の死者・行方不明者が出たことで方針転換した。

 蒲島氏は19日の県議会全員協議会で「被害防止の確実性が担保できるダムを選択肢から外すことはできない」と述べた。水を貯(た)める通常型のダムよりも環境負荷が小さい「流水型ダム」の建設を国に求めるとした。7月豪雨の被害について「知事として重大な責任を感じている」と述べた。

 知事の方針転換は前進だが、もっと真摯(しんし)な反省は必要だ。

 なぜ12年前の白紙撤回自体への明確な謝罪を表明しないのか。その上で専門家などの意見も聞きながら、建設に向けた冷静な議論を尽くす必要がある。

 ダムの建設は費用が巨額で長期にわたる。地元ではなお賛否が割れている。流域全体で河川の大規模な氾濫による被害を減らす対策も合わせて検討したい。

 国土交通省は、ダムを建設していれば流域の浸水被害を6割減らせたと推計している。氾濫は防げなかったとも指摘したが、被害の大きさを考えれば建設撤回はあまりにも悔やまれる判断だった。

 豪雨など自然災害の激甚化が急速に進む中で、住民の生命・財産を守るためのダムなどの公共事業は必要である。

 ただし、河川の氾濫を防ぐのはダムだけではない。流域の拡幅や氾濫予想地域にある住宅の高台移転などのハード面に加え、避難体制の強化などソフト面の対策を組み合わせることも有効だ。

 とくに川辺川ダムは昭和41年に計画がまとまったが、賛否をめぐって地元が長く対立してきた経緯がある。ここでダム建設に舵(かじ)を切るにしても、進め方を誤れば再び地元が混乱する恐れもある。

 そうした事態を回避するためには、専門家による徹底した調査を通じて住民に情報を公開するなどの取り組みが大切だ。地元での丁寧な作業を通じて民意の集約化につなげたい。政府にも復旧工事を含めて地元に対する支援の強化が求められる。

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