【主張】中国の邦人判決 重刑の乱発を見過ごすな

 中国の裁判所は今月、身柄拘束中の日本人4人に対し、懲役15年などの重刑を立て続けに言い渡した。いずれもスパイ活動への関与が問われたもので、事実関係を明らかにしないままの相次ぐ判決は明白な人権侵害であり、強く抗議する。

 2015年以降、少なくとも邦人9人が国家機密を盗んだ罪などで起訴されており、判決を受けた8人全員が実刑である。

 習近平国家主席は、中国共産党による司法の統制を意味する「党の全面的な法治国家の指導」を掲げている。法が党の下に位置する異常な社会である。一連の判決がこのことを強く再認識させる。

 中国とは、外交の基盤となる普遍的価値の「法の支配」を共有することができない。

 法が政治の道具と化す「法による支配」では、法はいくらでも恣意的に用いられる。

 華為技術(ファーウェイ)幹部の逮捕をめぐる対立を背景に、中国で起訴されたカナダ人には死刑判決が言い渡された。尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に体当たりした中国漁船の船長を海保が逮捕した際には、中国国内で日本人会社員4人が身柄を拘束されたことも記憶に新しい。

 一連の判決を受けた日本人の拘束も、同様に日中関係の緊張が続く中で起きた。容疑の詳細も分からないまま長期の服役を強いられることは、全く不当である。

 4月の日中外相会談で、中国側は拘束中の日本人を「国内法令に基づいて適切に対応する」と述べた。その結果が、重い実刑判決の乱発だった。

 安倍晋三首相は日中関係が「完全に正常な軌道」に戻ったとの判断を示している。

 だが日本側が重ねて求めてきた拘束日本人の釈放、帰国を無視され、それでもなお日中関係を「正常」と呼べるのか。

 日中関係を正常な軌道に戻す本当の出発点は、日本人被告らの早期帰国であるべきだ。

 習氏は6月、大阪での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席する予定だ。日本人の長期拘束が続く状態では、習氏を迎える日本国民の目も冷ややかなものとなるだろう。

 中国は即刻、日本人の拘束を解き、帰国を認めるべきだ。政府はその実現を強く中国側に迫らなくてはならない。

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