【主張】令和の社会保障 元気な高齢者も支え手に 人口減に合うサービス設計を

 令和時代の社会保障制度はどうあるべきか。鍵を握るのは、年齢を重ねた人が、地域や経済の支え手として暮らしていく社会をいかに構築できるかである。

 日本は平成の30年余に高齢化の急坂をのぼり、人口に占める65歳以上の割合を示す「高齢化率」は30%に迫った。そこで重視されたのは社会保障の受け手に対するサービスの拡充だった。

 だが、これをいつまでも続けることはできない。人口減少がさらに進めば、医療や介護に携わる人が不足し、制度を経済的に支える層も薄くなるからだ。

 人生100年時代である。65歳以上を一律に高齢者とするのが適切か。むしろ、高齢者の活躍の場を広げて社会活力を取り戻す。令和をそんな時代としたい。

 ≪「准高齢者」が活力生む≫

 ヤマタノオロチ伝説の残る島根県雲南市は、全域が過疎指定の中山間地だ。高齢化率は約38%である。市職員自らがここを「日本の近未来」と称するのは、この水準が30年後の日本の姿と重なるからだ。

 高齢化と人口減少で税収が減るなかで、行政サービスを膨らませることはあり得ない。市は職員数を抑制し、行政サービスも縮小せざるを得なくなった。

 代わりに考えたのが、地域に交付金を渡し、住民に市の業務を肩代わりしてもらうことである。それは、住民が真に必要とするサービスを作る契機ともなった。

 ある地域では全戸で、朝には玄関先に黄色の旗を掲げ、夕方にそれをしまっている。単身の高齢者が今日も元気なことを、住民同士で確認し合うためである。

 別の地域は、市の水道局から検針事業を受託した。60代と70代が全戸の検針に回り、ついでに80代と90代の単身高齢者らに安否確認の声をかける。ここでは60代、70代はむしろ「若手」である。

 これからの日本では、65歳以上を高齢者とする区分の見直しが進むだろう。日本は統計上は老いたが、その実態は老いていない。それが専門家の見立てである。

 日本老年学会と日本老年医学会は一昨年、65~74歳を「准高齢者」とするよう提案した。「高齢者」は75歳以上と位置づけた。

 心身のデータを医学的に検証したところ、10~20年前と比べて、加齢に伴う機能変化が5~10年遅れて表れていることが分かったからである。日本人は若返っているのである。

 その主張に沿うならば、日本の高齢社会にはこれまでと違った風景が見えてくる。

 支え手が減る社会で、従来の支え合いをしようとしても、うまくいかないだろう。高齢者の定義を見直して、それに合わせた世の中の仕組みへと作り替えていくことを考えてもいい。

 ≪年金受け取りは柔軟に≫

 至れり尽くせりの公共サービスは無理だとしても、地域で不足を埋め合わせられれば、一定のサービスを維持できる。社会保障の支出抑制にもつながろう。退職後も元気な准高齢者こそ担い手にふさわしい。

 さらに元気な人には、ぜひ本格的に働いて納税する側に回ってもらいたい。今のままでは社会保障は持続可能ではない。働き手を増やすのと同時に、受け手と支え手を年齢一律で分ける仕組みも見直す。これらを一体で進めたい。

 年金制度については、受け取り時期を、より柔軟に選べるよう改革を進めていくべきである。

 年金は65歳で受け取り始めると基準額が支払われる。だが、個々人の選択でそれを遅らせると、年金額が増える。その間の年金と運用益が上乗せされるからだ。今は70歳までだが、政府はさらに遅らせることができるよう制度変更を検討している。

 今後30年で日本人の平均余命はさらに3歳ほど延びる。長寿化や出生率、経済見通しなどを加味すると、年金の水準は2割程度ダウンする。だが、年金を受け取るタイミングを遅らせることができれば、影響を小さくできる。

 もちろん、心身の機能は人によって違う。地域の支え手に回れない人もいれば、生活が苦しく年金受給を待てない人もいる。そこへの目配りを忘れてはならない。

 多様な施策を制度に織り込んで人生設計の選択肢を増やしていく。そうすることで、「准高齢者」が支え手に回りやすい社会をつくることが肝要である。

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