【主張】改正水道法 国の関与で懸念の払拭を

 自治体の水道事業の基盤強化を目的とした改正水道法が6日の衆院本会議で可決、成立した。

 自治体が所有する水道の運営権を民間企業に売却することを可能とする内容だ。人口減少による水需要の低下と、これに伴う経営環境の悪化が背景にある。

 だが、水は国民の健康と命に直結し、経済活動を支える最重要のライフラインである。

 地震や豪雨などの災害が多発するわが国で、給水などの応急対応を民間に任せることや、外国資本の参入には懸念がある。利潤を追求する民間への委託には、水質低下への不安もある。

 改正法は、国に、水道基盤の強化に向けて基本方針を定めることと明記した。民間参入には厚生労働相が許可するとした。

 民間の参入基準や料金設定、水質の管理などについては、自治体任せにせず、国の関与が欠かせない。民間が手を挙げない地域では互いに水を融通し合う、広域連携も検討課題となる。

 厚労省によると、赤字の水道事業体は全体で約3割に上る。新法には民間のノウハウ導入で自治体の財政負担を減らし、老朽化した施設の更新を促す狙いがある。

 防災面でも、今年6月に起きた大阪北部地震では断水や、水道管の老朽化が大きな問題となった。全国の耐震適合率は4割弱にとどまり、大規模災害時には断水が長期化する危険性が高い。

 ただ運営権を民間に売却すれば水道管が新しくなり、安くて安全な飲料水の提供を受けられるというわけではない。そもそも自治体が赤字に悩む地域に民間企業が名乗りを上げるだろうか。

 参入した民間企業が過度の利潤の追求に走れば、料金の高騰と水質低下を招く恐れもある。実際に海外では、経営を再び公営に戻す動きが目立っている。

 英国に本部を置く公共サービスの調査機関によると、2000~15年に世界37カ国の235の水道事業が再公営化された。

 パリ市では、度重なる水道料金の値上げに市民の不満が高まり、再び公営化された。南米ボリビアでは1990年代、水道事業の民営化後に水道料金が2倍となって暴動が起きた。

 改正法の適用を考えている自治体は目先の利益にとらわれず、災害対応と安全な水の供給に責任を持つ姿勢が求められる。

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