【主張】金正男氏暗殺1年 独裁国家の凶行忘れるな

 金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、正男氏は昨年2月13日、マレーシアの空港で暗殺された。

 国際空港で、白昼堂々と神経剤VXが使用された事件は、正恩氏が政敵とみなした正男氏の殺害を工作機関に指示した、北朝鮮による国家テロである。

 正男氏の暗殺後、北朝鮮は核・ミサイル開発を加速させ、米本土を標的にする大陸間弾道ミサイル(ICBM)完成も間近だとされる。

 国際社会への恫喝(どうかつ)を続ける一方で、平昌五輪を政治宣伝の場に乗っ取っている。

 開会式には、正恩氏の妹、金与正氏が出席し、韓国の文在寅大統領とも面会した。言うまでもなく与正氏は、殺された正男氏の異母妹だ。

 1年前に兄を暗殺された妹が式典で笑顔を振りまく。政権の中枢にいる与正氏には工作への関与も疑われる。

 凄惨(せいさん)な粛清の歴史を繰り返す「金王朝」の重要人物を手厚くもてなす韓国政府は、その異様さに気づいているだろうか。

 ペンス米副大統領が「最も独裁的で残虐な国」と表現した北朝鮮の正体を、今こそ凝視せねばなるまい。

 マレーシアでは、実行犯として起訴されたベトナム人とインドネシア人の女2人の公判が続いているが、「いたずら動画に出演すると思っていた」と無罪を主張し、殺害を指示したとされる北朝鮮国籍の男4人は母国に逃げたままだ。真相の解明は遅々として進まない。

 司法当局は2被告の責任追及に終始せず、本来裁かれるべき北朝鮮の「恐怖政治」の実態を闇に葬らぬよう、事件の真相をつまびらかにしてほしい。

 対北包囲網を主導するトランプ米政権は昨年11月、正男氏暗殺にVXが使われたことを根拠に、北朝鮮をテロ支援国家に再指定した。わずか1年で事件を風化させてはいけない。

 気がかりなのは、正男氏の息子、ハンソル氏の消息だ。正男氏の殺害後、本人とみられる動画メッセージが投稿され、彼を支援する国にオランダなどが取り沙汰された。

 その後の動向は不明であるが、ハンソル氏の安全も脅かされているはずだ。凶行を再び許してはならない。

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