【主張】出生数の急減 危機的状況との認識を コンパクト社会へ移行急げ

 少子化のペースが加速してきたようだ。昨年の年間出生数は94万1000人ほどで、前年に比べて3万6000人も減る。厚生労働省の見通しである。

 すでに出生数が100万人を割り込んだ中で、この減り方は大きい。今後は子供を産める年齢の女性が激減するため、出生数の大幅回復は期待しづらい。危機的な状況だと見るべきだ。

 次世代が生まれなければ、社会は機能せず、国家そのものが成り立たなくなる。安倍晋三首相は昨年、少子高齢化を「国難」と位置づけた。総力を挙げて対策を講じ、人口減少に耐えうる社会への作り替えを急ぐ必要がある。

 ≪今後はさらに深刻化か≫

 出生数は平成28年に初めて100万人を下回り、2年連続の大台割れとなった。このまま推移すれば、100年後には30万人ほどになると予想されている。

 少子化は、経済の縮小や社会保障制度の破綻といった混乱をはじめ、あらゆる面で国力の衰退を招くだろう。たとえば「若い力」を必要とする自衛隊や警察、消防といった職種の人材確保が困難となれば、国防や治安までが揺らぐことになるのだ。

 地域によって、進み具合が速いところも出てくる。「年間出生数がゼロ」という自治体が各地に広がるのに、さほどの時間はかかるまい。すでに、後継者不足による中小企業の廃業や資本の大都市部への流出が始まっている。地域社会そのものが崩壊しかかっているところもある。

 もはや、日本には足踏みをしている時間的余裕はない。官民が協力し、できるところから着手しなければならない。

 「国難」との認識を持った安倍首相は、その方策として教育の無償化を打ち出したが、あまりにもスケールが小さい。むろん、子育て支援策の充実も重要だ。

 しかし、直ちに求められているのは、子供が生まれてこない現状をどう打開するかの策である。

 少子化と同時に高齢化も進んでいる。少子化対策の強化に専念することも許されない。しかも、少子化対策に特効薬はない。

 当面、出生数の激減が続くことを受け入れざるを得まい。それを前提として、社会を作り替えるぐらいの構想力が求められる。それには、日本の総力を挙げて立ち向かう必要がある。首相に強いリーダーシップの発揮を求めたい。

 国民の多くが結婚を望み、子供を持ちたいと考えている。ここに少子化対策の活路を見いだしたいものである。結婚や出産を願いながら、実現できないでいる人の理由はさまざまだ。多様なニーズをくみ取り、いままで以上にきめ細かな対策を講じることを政府に求めたい。

 ≪職場でも結婚後押しを≫

 大事な点は、雇用や収入の安定である。女性の社会進出が進み、共働きの世帯も増えた。保育の受け皿づくりや育休の充実、テレワークなど働き方の柔軟性を高めることに力を入れるべきだ。

 各種世論調査では、異性との付き合い方が分からないという若者が増加する傾向も示されている。出会いの場や雰囲気づくりに、企業が手を貸すことも期待したい。職場や地域で、縁談を勧める「世話焼き」の輪も広げたい。

 分かっていてもなかなか実現が難しいのは、出生数が減り続けることを前提とした社会への転換である。

 人口減少幅は40万人台へと突入し、やがて年に100万人近く減る時代が訪れる。足りない労働力を外国人労働者で穴埋めしようとするのは、非現実的となる。

 勤労世代が少なくなっても社会を機能させるには、「コンパクトな社会」に移行する視点が欠かせない。時代錯誤の大型開発などの発想とは決別するときだ。

 人々が集まり住んだり、24時間営業を見直したりする。自治体や企業が個別に取り組める。そうしたことは少なくない。

 ロボットや人工知能(AI)開発も、さらに推進しなければならない。社会のスリム化と同時に、成長分野に回す人材を捻出するという発想が大切だ。

 「未来への希望」こそが重要である。それなしに、出生数の減少に歯止めをかけ、少子化社会を乗り越えることは困難である。

 人口が減っても発展し、豊かな暮らしを維持できる。首相は具体的なプランを語ってほしい。

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