【主張】ISの駆逐 過激思想への対策怠るな

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が、イラクとシリアからほぼ駆逐された。イラクのアバディ首相は全土を解放したとして勝利宣言した。

 IS掃討戦の有志連合を率いる米国は、シリアを含め支配地の98%が奪還されたと発表した。

 テロ集団が国境をまたぐ広大な地域を制圧し、建国を宣言したのは3年半前だ。驚愕(きょうがく)すべき「怪物」の出現だった。

 住民から徴税し、油田を強奪して石油を密輸し、外国人を誘拐して身代金を要求した。日本人2人の殺害映像を公開するなど、残忍さも際立っていた。

 内戦下のシリアはもちろん、イラクも民族・宗派対立の表面化で政情は不安定だ。そこをテロ集団につけ込まれ、巨大化させてしまったことを忘れてはならない。

 必要なのは、争いをなくし、住民の暮らしを守ることである。まずはイラクでの避難住民の帰還、生活再建を急ぐべきだ。シリア内戦にいつまでも手をこまねいてはなるまい。

 国家分裂の状態にあるリビアなど、中東・アフリカを中心に、テロ集団に対して無力ともいえる危うさを抱えた国が少なくない。

 アフガニスタンは、イスラム原理主義組織タリバンが依然、勢力を維持し、政府が支配する地域は国土の6割にとどまる。そこへISが浸透を始めている。

 ISは新たな拠点を求め、各地の過激組織との連携も模索している。巨大化した過激勢力が新たに生じる恐れも無視できない。

 日本を含む各国が、テロ集団の情報を共有し、危機の兆候をいち早く察知して芽を摘み取らねばならない。政情不安の国へは、解消のための支援も必要である。

 ISの戦闘員はなお、地域に約3千人残っているとみられ、掃討戦は継続される。一方、欧州諸国を含む出身国に戻った戦闘員は5千人以上といわれる。

 過激思想を抱いている可能性が強く、各国で十分なテロ対策をとる必要がある。

 ISを特徴づけるのは、インターネットを駆使した巧みな宣伝戦であることを想起したい。欧米では普通の若者が感化され、車など入手の容易な「凶器」を使い、テロを起こすケースが目立つ。

 ネット上の過激思想対策も含め、長期のIS掃討戦を覚悟しなければならない。

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