【主張】回顧2017 「異質」な指導者目離せぬ 現状変更勢力から国益守れ

 世界は今年、2人の異質な指導者に翻弄された。

 米国第一主義に立ち、既存の秩序を次々と否定するトランプ大統領と、核・ミサイル開発で挑発を続ける北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長である。

 不当な核開発をやめない独裁者と超大国のリーダーを同列に並べるのは本来、適切ではない。しかしながら、国際社会の対応が両氏の言動に大きく左右されてきたのは事実である。

 とりわけ北朝鮮の脅威に直接、さらされる日本は、今後も2人から目を離すことができない。

 ≪分断狙う隣人に警戒を≫

 トランプ政権は北朝鮮の核武装は容認しない姿勢を鮮明にし、テロ支援国家に再指定した。日本も同じ立場から、圧力強化に向けて米国との連携を強めてきた。

 対する金正恩氏は、今年の元日に米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射準備が「最終段階にある」と宣言した。

 この時点で、世界の大方は年内に完成間近になるとは予想もしなかっただろう。またしても開発阻止に失敗したのだ。

 1月の就任直後、トランプ氏はいきなり環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)離脱を表明し、中東・アフリカ7カ国からの入国禁止令などの大統領令に次々と署名した。

 議会調整も政府内の根回しもない“トランプ流”に各地でデモが起きたが、白人の支持者らは拍手喝采した。

 そうした内向きの米国をにらみながら、金正恩氏は「国家核武力」の完成に向けて布石を打っていたといえよう。

 マレーシアの空港で異母兄弟、正男氏の殺害を見届けると、核・ミサイル開発の速度を上げ、夏にはICBM発射や6回目の核実験に成功した。

 ICBMの配備を許せば、米国の「核の傘」は効力をそがれる。国連では初の「核兵器禁止条約」が採択された。だが、日本が唯一の被爆国だと唱えても、現実的な備えを講じたことにならない。

 安倍晋三首相が「国難」への覚悟を問い、衆院解散に出た背景にも、そうした危機感があった。

 対北包囲網の強化に欠かせないのは、日米韓の結束である。しかし、韓国の文在寅大統領は最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備をめぐり、これに反対する中国に妥協を強いられている。

 一方、歴史問題では抗日で中国と協働し、北朝鮮への融和的な姿勢も捨てない。異なる相手に口裏を合わせる“カメレオン”ぶりには当惑する。米韓の寸断をもくろむ隣人の思うつぼではないか。

 対北圧力のカギを握る中国の習近平国家主席は、原油の禁輸には腰が重い。米国の視線を朝鮮半島に向けさせつつ、南シナ海の軍事拠点化を公然と続けている。

 ≪拉致置き去り許されぬ≫

 2期目に入った習体制は、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」で囲い込み、独自の秩序形成を急ぐだろう。それを阻むための開かれた地域構想は、日本が提唱し、米国が賛同したインド太平洋戦略であるはずだ。

 良好な安倍-トランプ関係が奏功した例だが、日米の同床異夢に終わらせてはなるまい。強固な日米同盟をさらに肉付けしていく努力を止めてはならない。

 トランプ氏への不安がぬぐえないのは、独善的な思考によるところが大きい。ロシアによる大統領選介入疑惑の追及はまだ続く。

 自らの弱点から支持者の目をそらそうとするためだろうか。強硬的な対外政策をツイートするのが習いとなっている。

 米国に求めたいのは、自由と民主主義、法の支配という価値を国際協調を通じて守り抜く意思である。それに対抗する現状変更勢力は巧みに戦いを仕掛ける。

 スターリンの粛清時代を肯定するプーチン露政権は、軍事力とサイバー攻撃、世論操作などを併せた「ハイブリッド戦争」で西側の分断をもくろんでいる。

 日本の主権と国民の安全が踏みにじられた屈辱を、置き去りにしてはならない。

 「善良な13歳の少女」である横田めぐみさんが北工作員に拉致された事件を、トランプ氏は国連演説で取り上げた。

 国際世論が高まりをみせる今こそ、拉致被害者の救出に日本は能動的に動くことが必要である。

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